富士の麓で福はうち!コロナ禍の逆境で奮闘中のHostel Mt. Fuji- FUKUYAの『神田まち子さん』

今回のインタビューに答えてくださったHostel Mt. Fuji FUKUYAの神田まち子さん

 宿泊施設の大手予約サイトであるブッキング・ドットコムが発表した2022年のTraveller Review Award。この賞は世界の旅行者2億3千万人から集まったクチコミをもとに『日本で最も居心地の良い宿泊施設の割合が多い地域』をランキングにしたものです。その中で3位にランクインした富士吉田市は、コロナ禍で移動制限がかけられてなお、人々の記憶に強く印象づいた地域と言えるでしょう。今回は、そんな世界的な観光地である富士吉田市の中でも、早くから外国人観光客を受け入れてきた「Hostel Mt. Fuji- FUKUYA」のオーナーである神田まち子さんにインタビュー。開店のきっかけや宿泊施設ならではのエピソード、コロナ禍での運営に関するご苦労などをお聞きしました!

Hostel Mt.Fuji-FUKUYA

http://hostel-mtfuji.jp/

▼神田まち子さんがHostel Mt.Fuji- FUKUYAをはじめるまで

Hostel Mt. Fuji-FUKUYAのエントランス
本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくおねがいします。

さっそくですが神田さんが富士吉田市に来られた経緯を教えてください

私は生まれも育ちも富士吉田市です。観光案内所での勤務が長く、30年ほど勤めてきました。富士吉田市が国際観光都市を目指す中で、その当時100人の英語ボランティア通訳が必要とのことで登録しました。それから富士吉田市長さんからの委嘱で富士吉田市観光案内所で働くことになりました。2010年頃には外国人観光客の数も徐々に増えてきました。当時、富士吉田市一帯は外国人観光客を受け入れられるような施設がほとんどなく、わずかにあったビジネスホテルも言葉の壁があり、外国人の宿泊を受け入れてもらえませんでした。特に富士登山のシーズンになると、心苦しいくらい施設が足りない状況でした。五合目のトイレで仮眠して弾丸登山してもらうしか選択肢がないような状況下で、もし何かあった時にはどうしようか本当に心配だったんですね。

2015年の秋になってもそんな状況が続き、観光案内所のスタッフは宿泊施設探しでとても大変な思いをしました。私たちは宿泊施設を見つけられない旅行者のために、友達の家に泊めてもらえるよう頼むようなこともしていましたが、そう長く続くことではないですし、何より根本的な問題解決になっていない。そんなわけで自分の家や敷地も空いていたので「よし、やろう!」と思って外国人旅行者の受け入れられるホステルをはじめました。観光案内所に勤めていなければこの施設をはじめることはなかったです。今でこそ富士吉田にはゲストハウスが40軒ほどあるそうですが、Hostel Mt. Fuji- FUKUYAをはじめた当初は外国人が気軽に泊まれるような施設が市内に数軒しかなかったんです。

お仕事で感じた地域の課題にご自身で取り組むことにされたんですね

かつてアメリカへ1年間文化を学ぶ為に留学したことがあります。その時にいろんな人に助けられたことが忘れられません。人と人とのつながりは大切ですね。観光地はいくら美しくてもサラッと見て回り、後で本を見たり写真を見たりして、こんな風だったなぁって思い出し、それだけで終わってしまうのが残念だと思います。友達や宿の人、旅先で出会った人達との関わりが心の中に残るのを私自身が感じていたので、そういった思い出づくりのお手伝いをさせて頂けたらいいなと思ってます。

今はコロナ禍のため非接触のチェックイン方式を多くの宿泊施設が導入していますが、ここに来てくださるお客様には、私が顔も出さずに泊まって頂くのは寂しいなと思っています。来てくださる方もとても注意して、気を遣われて富士吉田に来られる中、暖かい言葉をお掛けし、お出迎えしたいと思っています。

旅人が嬉しくなるようなあったかいお宿ですね

そうでありたいと思っていますが、私は田舎者ですので直ぐに言葉が方言になってしまいます。丁寧語やビジネス的な言葉っていうのはどうしても人と人との間に壁を作ってしまうように思います。最初の一言二言は丁寧に話しますが、その後は本当にフレンドリーに相手をさせていただいています。とはいえ今はコロナ禍で外国人観光客はおりません。宿はオープンして今年で6年目ですが残念なことにコロナ禍で殆んど稼働してません。 先日google mapから、登録情報に変更はないかの確認電話が来たんですが「コロナ禍で大変な時期ですが、お宿のレビューもとても高いので、ぜひ頑張ってください」と嬉しいお言葉で元気をいただきました。

▼宿泊施設ならではのエピソード

新設されたワークスペースではドリンクを楽しめるカウンター席も用意
普段はどんなことに気をつけて接客されていますか?

お客さんに楽しんでもらいたいです。観光のことを聞かれたらもちろん答えますけど、お酒を楽しく飲んでるお客さんにはその場のノリに合わせて声をかけます。そうすると「一緒に飲もうよ」って誘えてもらえたり「じゃあ、自分のお酒持ってくるから」って言えば「いいよ、このお酒を一緒に飲もうよ」って言ってもらえたり。「何のワイン飲んでるの?」って言えば「飲んでみる?」と返してくれます。本当に一期一会で、こんな楽しい時間の持ち方ってないなっていつもすごく感謝しています。この富士吉田で生まれてどこにも出ていないのに世界中の人々と繋がることができるというのはすごいことだと思います。

お客様の中には、サプライズでプレゼントを送ってくださる方もいます。私はQueenが大好きなんですけど、ある日アメリカのアマゾンから突然荷物が届いたんです。全く身に覚えがないもので送り主は“ノハラ”と日本人っぽい苗字でした。いったい誰なんだろうかと思いつつ、開けてみたらそこにはQueenのフィギュアが入っていたんです。それでアメリカ人のお客様からだということに気づきました。

ノハラさんという方ではなかったのですか?

それがフィールドさんという方からでした。日本語を熱心に勉強している方で、連絡してみたら「サプライズ」って言われました。彼女が出来たから一緒に日本を旅する時に連れて行くね、なんて嬉しいメッセージをもらいました。宿の仕事をしていると温かいエピソードだけじゃないです。時々、辛辣なレビューを頂くこともありますが殆んどがコミニュケーション不足の事が多いです。コロナ禍で先が見えない不安に押しつぶされそうになったことも正直あります。旅行者の方々にコロナ禍が明けたらぜひまた戻ってきてほしいです。

▼富士吉田がもし、まるごとサテライトオフィスになったら…こんなことが起こる!と期待していること

2席設けられたデスクワークスペースはカウンター席以上に作業に没頭できる
富士吉田がまるごとサテライトオフィスになったらどんなことが起こると思いますか?

まず活気が出るのは間違い無いですよね。経済効果も出るし、富士吉田市の住民の意識も変わって行くと思います。ここは都市部と違って、閉塞的な考えをする方は少なく無いので、隣の家に知らない人がいても「ひょっとしたらワーケーションで来てるのかな?」というくらいオープンになっていってほしいです。そんな環境なら、住民の人と旅行者の人で何気ない会話が生まれたりして、それがまた富士吉田を好きになってくれるきっかけになってくれたらいいなと思います。

もう十数年前になりますが、富士吉田市では上吉田の観光プロジェクトがありました。行政の方や、大手旅行代理店の方、大学教授など100人くらい集まって、どんなツアーが上吉田を盛り上げられるのか模索するというものでした。結果は御師の家でヨガをする体験ツアーが採用されました。私は人口減少や進学・就職による上京で増えている富士吉田の空き家を利用して、週末に仮の里帰りができたら面白いんじゃないかと思って意見を述べていましたがダメでした。富士吉田から子供たちが進学や就職で他県に行って寂しい思いをしている方のところへ、都市部で人の繋がりをつくるのに苦労している人が仮の故郷として帰ってくるという構想です。もし、富士吉田市がワーケーションタウンになったら、そんなことが起こっても面白いんじゃないかと思います。

神田まち子さんからのメッセージ

Hostel Mt.Fuji- FUKUYAはカフェスペースを新たに設けました。狭いところですが、ゆっくりお茶を楽しんだり、ワークスペ―スにもなる場所です。いろんな人に来てもらえたらいいなと思ってます。ぜひみなさんも遊びに来てくださいね。

Hostel Mt. Fuji-FUKUYA

http://hostel-mtfuji.jp/


◯「富士吉田まるごとサテライトオフィス」構想とは

「富士吉田市内をまるごと使ってテレワークできる環境を整えよう」という構想です。

日本は新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの企業やオフィスワーカーに「在宅勤務」が推奨されて来ました。しかし、自宅で働くことに息苦しさ・やりづらさを抱えている人たちの存在は今や社会的な問題です。

そこで当社は山梨県の富士吉田をモデルタウンに「日常型ワーケーション」を提案しています。日常型ワーケーションとは、日中は通常勤務のようにしっかり仕事をして、仕事の前後の時間(朝・夕方〜夜)に地域の魅力に触れられるスタイルです。

このスタイルは、作業環境の変化による生産性の向上のほか、地域の魅力に触れる機会の創出や、常に変化を感じる生活のなかで発想力・企画力などのクリエイティビティが培われるというメリットがあります。

富士吉田は新宿から1時間強と好立地ながら、富士山が目の前に広がる絶景地。当社は富士吉田でワーケーションができる仕組みづくりに取り組んでいます。まるごとサテライトオフィスの富士吉田をぜひ体験してください!

◯富士吉田まるごとサテライトオフィスで取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」

「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークBARにいらしてください!


記事執筆/宮下 高明