DV被害者の支援事業を富士吉田で!実体験を漫画化して社会問題に立ち向かう漫画家『二星星』さん

新型コロナウイルスの影響は、観光業をはじめとする経済活動のみならず、国民の生活環境にも大きな影響を与えてきました。そのひとつに自宅での滞在時間増加に伴う家庭内不破が挙げられます。内閣府の男女共同参画局によれば、DV(身体的・精神的・経済的・性的虐待)に関する相談件数は、コロナ前後で1.5倍にも上ると報告されており、その深刻な状況が浮き彫りになってきました。今回は、自身がDV被害者という辛い過去を持ちながら、その経験を漫画として世に広く伝え、富士吉田市に新たなDV被害女性救済のシェアハウス開業を目指す『二星星(にぼしぼし)さん』にインタビュー。これまでのご経歴やこれから取り組まれるお仕事などについて聞きました!

 

▼二星星さんと富士吉田が結ばれるまで

今回のインタビューに答えてくださった漫画家の二星星さん
本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくおねがいします。

さっそくですが二星星さんが富士吉田市に来られた経緯を教えてください。

地元は鳥取県で、18歳で上京してからはずっと東京です。自己表現をすることが自分に合っていて、地元の市民劇団で舞台に立っていたこともあります。多分そういったことをするなら東京だというのが親のイメージだったようで、就職のタイミングで親に「自立しなさい」と言われ、東京にポンっと放り出された感じです。とはいうものの舞台のセリフを覚えるのが苦手で、本当は裏方の作業をしたかったのもあって、20代半ばくらいで舞台には出ていません。そこからも語り尽くせないくらいたくさんのことがあったんですが、30歳になった時、漫画にもした事件が起こりました。思えばこれも富士吉田市とご縁をいただくひとつのきっかけだったのかもと思います。

どんなことが起きたのか教えてもらえますか

詳しくは私が描いた漫画『ダメ彼を訴えます!!〜殴られたので裁判しました〜』を読んでもらいたいのですが、当時結婚を前提に付き合っていた男性の浪費と嘘がきっかけで喧嘩になりました。その時に顔面を殴られて鼻を骨折しましたが、彼からの謝罪はなく悪びれもしない様子だったので、裁判を起こすことにしたんです。専門家ではないので難しい法律のことも全然わからないし、被害を受けた私の方がお金や時間をすごく費やさなくてはいけなくて。同じような経験をしている女性たちのために、少しでも世の中に広げていきたいという活動の中で、ご縁をいただいて漫画を描いたりもしました。編集の人に助けられながら、なんとか形にした漫画を店頭に置いてもらうために、手書きのポップを作って500軒ほど本屋さんを回りましたね。

他にも講演活動やラジオ出演など、自分でいろいろな番組を尋ねて営業しました。その時に、今ではなくなってしまいましたが、東京FMのラジオ番組『デュアルでルルル♪』で山梨県に移住しようというテーマの回があって、山梨県1日体験ツアーというをやったんですね。行き先は富士吉田市で、全10名中4名が女性でした。道中、DVの被害女性のための活動をしている話をしてみると、4名のうち私を含めた3人が暴力・精神・経済・性的なDVを受けた経験があると知りました。統計的には3人に1人と言われているので、ありえない数ではないと思いましたが、あまりの確率に驚きました。そして訪れた富士吉田市で空き家問題があると分かった時に、ふとこの空き家をDV被害女性の役に立てられないかと思ったんです。そこから富士吉田市とのご縁が始まりました。

▼女性シェアハウス 新しい人生への途中下車の家『星の虹』

講演会で自身のエピソードを綴った漫画を紹介する二星星さん
空き家問題とDV被害が二星星さんの中で繋がったわけですね

実は、DV被害女性をかくまう従来の『シェルター』は、入所時に警察や行政が発行するDV被害の証明書が必要だったり、滞在可能日数が厳格に決まっているなど、利用したい人にとって使いにくいところがありました。また、滞在中には加害者からの接触を避けるため、携帯電話はもちろん、外出を含めた外部との接触を取る方法を完全に断ってしまうというのが通例です。そうなると結局何の準備もできていないのに、シェルター滞在可能日数が満期になって放り出されてしまうような場合や、中には行く宛もなく加害者の元へ戻ってしまうという悲惨なケースも少なくないそうです。DV被害を完全に撲滅することは難しいですが、被害にあった女性たちが経済的に自立することができれば、少なくとも再発の防止に繋がるのではないでしょうか。そこで私は、富士吉田市の空き家を利用して、従来のシェルターにはなかった外部とのコンタクトや経済活動が自由にできるDV被害女性向けのシェアハウス 星の虹を始めたいと思っています。

 

これまでのシェルターでできなかった”DV被害者が安心して自由に活動する”ことができる場所ですね

これまでのシェルターでは、とにかく情報を漏らさなければDV加害者は追ってこれないという考えが尊重されてきました。それを実現するために、DV被害者の行動を極端に制限したり、シェルターの場所を頻繁に変えるといった経済的な負担も大きい方法が取られてきたんです。でも、今のようにほぼ全ての人が情報端末を持っている透明性が高い社会なら、情報をオープンにすることで施設の安全性を高めることができると思います。これは多くの方の活動によって、少しずつDV問題の認知度やそれが社会的に恥ずかしい、あるいは犯罪だという認識が世の中に広がってきたおかげです。

また、女性シェアハウス 星の虹では地元企業などの協力団体と一緒に、利用者が技術習得や就労支援を受けることができる仕組みも取り入れようと思っています。そのひとつが山野愛子どろんこ美容南越谷のトップエステティシャンであるTERUKO氏と協業する、エステティシャンを目指すプログラムです。同氏はDV被害女性が辛い経験を乗り越えて新たな人生のスタートを目指す女性シェアハウス 星の虹の理念に強く賛同してくれている強い味方です。

ラジオ番組に出演する二星星さん

この方法であれば、これまでのシェルターのような完全に外部との接触を断たれる方法と違って、DV被害によって心身ともに傷ついた被害女性の社会性をなるべく失わずに済むと思います。もちろん働いた分は賃金が発生するので、次の生活の準備にもなります。そしてもし、彼女たちが女性シェアハウス 星の虹の次の生活の場所として、自分たちで改修した空き家を選んでくれたとしたら、富士吉田市の空き家問題や人口減少といった地域課題も同時に解決できるかもしれません。東京からも好アクセスで、世界的にも有数な絶景が楽しめる富士吉田市で、辛い経験をした多くの女性が自立して次の生活へ向かっていける女性シェアハウス 星の虹開所に向けて、現在準備中です。

▼富士吉田がもし、まるごとサテライトオフィスになったら…こんなことが起こる!と期待していること

女性シェアハウス 星の虹について語ってくれる二星星さん
富士吉田がまるごとサテライトオフィスになったらどんなことが起こると思いますか?

富士吉田市は、積極的に新しい取り組みをしながら前に進もうみたいな感じが街ぐるみで見えるので、地域の外の人たちも入ってきやすい土壌があると思います。そこにまるサテによって、街のあちこちでワーケーションが楽しめる環境が整っていけば、その人材目当てに、地域の内外からお仕事が富士吉田市に集まるようになるかもしれませんね。テレワークができる人たちから見て「この街にさえくれば仕事ができる」というになれば良いサイクルに繋がっていくと思います。反対に、例えばお年寄りの方が「若い人が何かやってるね」というふうに離れていってしまったらすごく残念だと思います。物事には良い面、悪い面がどうしても生まれてしまいますが、その折り合いをつけながら、街全体が盛り上がっていったら良いと思います。

 

二星星さんからのメッセージ

富士吉田市で活動されているたくさんの方同士が、全然違うジャンルであっても、それを組み合わせてイベントができたりするし、それができる街になればきっと世界から注目されると思います。それこそいろいろなバックグラウンドを持っている人たちが、ここでは生き生きと生活していけるとみてもらえるようになれば、観光だけじゃなく、先進的な福祉の街のロールモデルとして世界から注目されるようになるかもしれませんね。

 

二星星さんインスタグラム

https://www.instagram.com/ni_boshi_boshi/?hl=ja

 

『ダメ彼を訴えます!! ~殴られたので裁判しました~』

https://dokusho-ojikan.jp/serial/detail/t139471

 

◯「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。

(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

 

◯富士吉田市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」

「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

 

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークPlusにいらしてください!

記事執筆/宮下 高明