地域の人を巻き込んで多種多様な人が集える場所に。
富士山駅直結『Q-STA』社長・古谷幸二さん

富士吉田市の中心駅である『富士山駅』は、富士山の吉田口登山道を目指す登山客の出発点でもあり、国内外から来る観光客で賑わいをみせています。その駅に直結するのは複合商業施設『Q-STA(キュースタ)』。衣料品や雑貨、フードコートをはじめ、フィットネス、ワークスペース、クリニックなど、地下1階から地上6階まで多種多様なサービスを展開しています。今回は、1年ほど前からQ-STAの社長を務められている古谷幸二さんにお話を伺いました。富士急行株式会社に入社されてから、経営理念である喜び・感動を、場所を変えながら創造してきた古谷さん。あるときは運輸関係、あるときはケーブルテレビなど、さまざまな経験を積まれてきました。制約がある中、一人でも多くのお客さんに足を運んでもらえるよう催し物を考えたり、老朽化が進む建物の安全性を確保しようと試行錯誤されています。まるサテの拠点『ドットワークPlus』も入るQ-STAのこれからについて、古谷さんの構想をお話していただきました。

勤続32年。富士急グループでのこれまで

インタビューに応じてくださった富士急百貨店『Q-STA』社長・古谷幸二さん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

古谷さんのこれまでの経歴を教えてください

本社である富士急行株式会社には平成3年に入社しました。幅広く事業を展開している会社なので、私も県内外問わずさまざまな現場で働いてきました。バス事業や管理部門、ケーブルテレビ、熱海の船・ホテル事業など、業種もいろいろです。

富士急行は富士山を背景に事業を展開している会社なので、世間の“SDGsに対する取り組みが盛んになるよりずっと前から、環境や富士山の保全にどこよりも力を入れてきました。10年前に富士山が世界文化遺産に登録されましたよね。それがきっかけで、さらに「富士山を守っていきましょう」という流れが加速していきました。富士急グループの各社が、環境や富士山の保全に対する取り組みを強化していた頃、運輸関係に所属していた私は電気バスの導入に携わりました。山梨県では一番早い導入だったと記憶しています。

電気バスはどのように導入されたのでしょうか?

電気バスにはバッテリーが必要なのですが、その頃中国のバッテリー技術の進歩がどこよりも早く、経済技術開発区(中国の政策)である蘇州(ソシュウ)の会社と取り引きをしました。蘇州では、公共バスのすべてが電気に変わっていると思います。というのも、もともと上海や北京の環境汚染問題があって、それがきっかけで国が威信をかけて環境対策に取り組んだ過去があったんですよね。その対策のひとつが、十分なバッテリーをつくること、そして中国の交通機関を電気バスで賄うというものでした。そんなこともあり、中国のバッテリー技術は世界でも高水準だと言われていますね。蘇州の会社と私どものビジネスがマッチングして、まず電気バス2台が導入されました。

電気バスは化石燃料と違って、基本的に二酸化炭素が排出されません。それにディーゼル車(軽油で走る自動車)の使用燃料に比べたら、約1/3のコストで賄える。ということは、それだけ経営的にも安定するし、二酸化炭素の排出も抑えられますよね。いわゆる燃費効率が向上するので、いいなと思いました。電気バスは当然充電が必要なので、充電器を設置する必要があるのですが、それについては国土交通省が出している補助金を活用しました。日本も化石燃料のストックを多く持っているわけではないので、電気に切り替えていく施策のひとつとして、インフラ(産業や生活の基盤となる施設)のための補助金を出しているんです。富士5合目までの道は勾配がきついので、バスにもパワーが必要になってくるのですが、そういったところにも対応できるスペックになっています。

富士山駅を出発する電気バス。“EV-BUS”の文字と木のデザインが目印

電気バスの導入に至ったのは、環境保全はもちろんですが災害対策という側面もあります。あの電気バスはたしか324kWだったと思うのですが、日常生活であれば1ヶ月間耐えられます。携帯電話も30分程度の充電ならば1万台くらいは可能ですし。あとは、避難所では過ごしづらい方に活用していただくことも想定しています。例えば授乳をしなくてはいけないお母さんですね。灯りがあって、冷暖房が完備してある空間があれば安心ですよね。富士吉田市や河口湖町とは、そういった防災に関する協定を締結していて、何か災害が起こったときにはこのバスを無料で貸し出すことになっています。一度、大規模停電が起こった際に出動したことはあるのですが、着いた頃に復旧したので災害時の活用は今のところまだないですね。

 

歴史とともに進む老朽化。思い描く改修後の未来

Q-STAで一番力を入れている取り組みは何でしょうか?

ひとつは、いろんなイベントをこまめに開くことです。地域の人が集まりやすい雰囲気づくりや、興味を持ってもらうことが私たちのミッション。なので、小さな展示会からはじまり、音楽のイベントや催事などを地域の人を巻き込みながらやっています。来てくれた方が少しでも立ち止まって見てくれて「ここ変わったね」「面白くなったね」「ここで何かやれるらしいよ」と言ってくれると良いですね。その話が人から人に伝わって、また人が人を呼んでくれるような循環ができればいいと思っています。私がきてからこの1年は、そういった小さなイベントをコツコツやってきました。

先日は駐車場を使って2日間、ビアガーデンを開催しました。予算が限られているので、自分たちで作るローカルなイベントです。キッチンカーを呼んだり、ダンスやバンドの発表をしたい人など、地元の人たちに集まってもらって。それに、ちょうど駐車場から富士山が眺められるんです。夜に灯る山小屋の灯りはなかなか良いものですよ。皆さんが頂上に向かって歩いているルートがよくわかる。開山期間しか見ることができないのですが、多くの人に夜の富士山を楽しんでもらいたいですね。

駐車場の一角でフリーマーケットが開催されることも

他には、デパートなどによくあるご当地フェアを時々うちでもやっています。つい先日も北海道から鮮魚店がきてくれました。こういった催事は、県庁所在地にある大きなデパートで開催されることが多いと思うのですが、地方に住む人はわざわざ足を延ばさないといけないですよね。特にお年寄りは大変です。「富士吉田にいながら気軽にご当地フェアを楽しんでもらいたい」という思いがあり、コーディネートしています。5階は内科や整形外科など、病院施設のフロアになっているので、受診のあとにも寄ってもらえたら嬉しいですね。それから、幅広い層から人気の『無印良品』が入っているおかげで、若い世代の人も訪れてくれます。

1階の催事コーナー。7月には北海道の鮮魚が並んだ

今後予定している事業展開があれば教えてください

この施設はもうすぐ築50年になるので、あらゆるところで老朽化が進んでいます。みんなが集う場所にしていくためには、第一に施設の安全性を確保しなくてはならないし、責任を持って取り組まなければと思っています。この間はエレベーターを新しいものに取り替えましたね。昔、この建物には『イトーヨーカドー』さんが入っていたんですよね。子どもの頃から富士吉田に住む多くの3040代の方にとっては、休日に家族で訪れた思い出の場所でもあるはずです。またここに来ていただくためには、催し物を開くのも大事ですが、設備投資をしながらこの建物を大切に引き継いでいきたいです。

今は屋上の『富士山展望デッキ』の改修プランを練っているところです。屋上もかなり老朽化が進んでいるのですが、あそこから見える富士山は絶景です。なので、改修したら屋上をみんなの憩いの場にできたらいいですし、発表の場としても活用できたら最高ですね。今年『エイベックス』の子ども向けダンススクールがQ-STAにオープンしました。6階の『フジヤマフィットネス ヴィーナスライフ』内にあります。発表するところまでをしっかりとやるスクールなので、それを屋上のスペースを使ってできたらいいなと思っています。富士山が見える場所での発表は、子どもたちにとっても、観にきたお客さんにとっても、きっと心に残るはずです。他には、小さなお子さんがゴロゴロできるような工夫ができたらいいかなと。ちょっとリラックスできるような。最終的には屋上に来ること自体が目的になる、そんな場所にしたいです。

現在の屋上の様子。四季折々の富士山が望める絶景スポット

古谷さんが考える富士吉田とまるサテのこれから

古谷さんからみた富士吉田はどんな印象ですか?

富士吉田は日本のシンボルである富士山を抱えている市ですから、富士急グループと同様に、富士山の保全には力を入れているなと感じます。それと、近年は観光客を迎えるという意識がますます高まってきている印象を受けますね。とくに若い方々が頑張っていて、前よりもずっと良くなってきている気がしています。もともと富士五湖を目指してくる観光客の方は多くいましたが、コロナウイルス対策が緩和されてからは、さらに外国人観光客が急増しているようです。近隣の市町村も含め世界的な観光地になっていますし、富士吉田市を中心に非常に賑わってきています。Q-STAにもお土産売り場があるので、ぜひ観光の際には足を運んでもらえると嬉しいです。

Q-STA2階のまるサテ拠点『ドットワークPlus』の印象もお聞かせください

アクセスの面でいうと、都心から車で約2時間の立地ですし、ここ数年で生活様式がだいぶ変わってきているので、リモートワークの方にとってすごくありがたいスペースですよね。リモート中心の世の中になり、生活はますます便利になった。そんな今だからこそ、デジタルだけではなくリアルな対面での会話も大事にしていきたいですね。今後、人と人が実際に出会えるドットワークPlusのような場所が増えていくのはすごく良いことだと思っています。

働いている人もいて、学生さんもいて、中には旅行者の方もいるかもしれない。異業種だったり、他の地域の人だったり、多種多様な人々が集まる窓口になっていますよね。リアルでの出会いを提供する場所になっている気がします。

大鳥居がシンボルの富士山駅。バスの停留所もあり多くの人が行き交う

古谷幸二さんからのメッセージ

富士山駅にお越しの際はぜひQ-STAに足を運んでいただき、ここから見える富士山の素晴らしい景色を味わってもらいたいです。特に屋上の展望デッキからの眺めはQ-STAならではだと思うので、上がってみてください。その後、あわせてショッピングなどを楽しんでいただけたら。お客様のご希望に沿えるものを今後も提供できるよう努力を続けていきますので、ご期待ください!

 

(株)富士急百貨店 Q-STA
http://q-sta.jp

 

◯ 「富⼠吉⽥市まるごとサテライトオフィス」とは

「富⼠吉⽥市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は⼭梨県富⼠吉⽥市全体を使って、様々な事業者が富⼠吉⽥市内に⾃分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を⼿軽に持つことができる取り組みです。
(詳細: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

 

◯ 富⼠吉⽥市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる⽅を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている⼈がいるので記事で紹介してほしい」

「⾯⽩い構想があるのでこんな⽅と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是⾮ドットワークPlusにいらしてください!

写真・記事執筆/⾼井まつり(KINONE)