施設運営と海外の大学院を2つも並行!地域活性化に本気の「ドットワーク富士吉田」運営責任者
富士山駅からほど近く、富士山の絶景を目の前に思いきり作業に集中できるコワーキングスペース「ドットワーク富士吉田」。外壁の大部分がガラス張りで、明るく開放的な雰囲気の同施設には、県内外からのテレワーカーやワーケーションを満喫する人々、フリーランスなどが連日訪れます。今回は、そのドットワーク富士吉田を先頭に立って盛り上げる、運営責任者となって半年の北田萌さんに富士吉田のまちづくりやこれからの可能性についてお話を聞きました。
▼北田さんが富士吉田に来るまでの経緯
本日はよろしくお願いします!
こちらこそよろしくおねがいします
北田さんのご出身はどちらなんですか?
生まれこそ千葉ですが、育ちは岩手県の盛岡市です。東北育ちなので2011年の東北大震災にも被災しましたが、震災は私にとっても大きな契機になりました。入学の直前に被災したということもあり、クラスメートの名前も覚えきらないうちに校舎の片付けから学校生活が始まったんです。
そのときに芽吹いた「助け合いのマインド」は、被災した沿岸部の人たちに英語を無料で教えたり、英語の絵本を子供たちに読み聞かせしたりといったボランティア活動にも繋がりました。家を失うといった壮絶な体験をした方たちの心を癒せればと思ったんですが、やっぱりその傷はとても深くて…。
ご自身も被災された中で助け合いの精神を育まれたんですね
当時、私は外国語系の高校で英語コースに在籍していました。外国語系なので在学中に留学する人も多く、私も「トビタテ!留学JAPAN」という交換留学制度を利用して、被災地の現状を伝える学生アンバサダーのような経験もさせてもらいました。アメリカに1年、タイに2週間滞在しましたが、特にタイで毎年洪水被害がある地域を訪れたとき、視野がとても広がったんです。
どんな風に視野が広がりましたか?
その地域では日本の被災した沿岸地と同じく、災害で家を失う人が多くいます。それでもみんなめちゃくちゃ明るいんですよ。「また先月流されちゃったけど、ちょうどやってみたい新しいレイアウトがあったから、今からみんなで家建てるわ」みたいな。片や日本の被災地の方は「家が流されたらもうお終いだ…」って。この2つを繋いだら、めちゃくちゃ良いことが起こるんじゃないかって発想から、被災地同士をオンラインで繋ぐ試みにも挑戦しました。
そして、やっぱり日本の被災地の方は驚いていました。「え?家を流されてそんなノリなの?」みたいな。それは同じ体験をした人だからこその共感と、それでもポジティブな考え方ができるっていうギャップがあるからこそで、一種のカルチャーショックによって視野を無理やり広げる活動でした。だからこそ「世界には同じように苦しい状況にあっても、頑張ってる人もいて、私達だけじゃない、孤独じゃないんだよ」っていうことを伝えられたと思います。
北田さんご自身もポジティブですが、きっかけがあったんですか?
今の私の人との接し方、生き方にも関係するんですけど、東北大震災でクラスメートを亡くしました。苦手科目のことで私をよくからかってくる人で、仲が良かったわけではないんですが、その東北大震災が起きた春休みにちょうど沿岸部に遊びに行っていて、そのまま帰らぬ人に。その人と最後に交わした言葉とかがすごい嫌な言葉で、仲良くないながらもその人の道が絶たれてしまったということがとても悲しかったんです。
そして「これが死ぬってことだし、これが私が生きてるってことなんだ。この生きてることに対して、もっと価値のある生き方しないといけないな」ってすごく思いました。だから、自分が後悔したくないし、少しでも良い人でいようと思っています。そのときから嫌な態度されたらめちゃくちゃ笑顔で返すとか、ありがとうございますってちゃんと言うとか、そういうレベルでもポジティブになりました。
▼富士吉田を選んだ理由と北田さんのライフスタイル
高校で貴重な体験をされましたが、その後どんな道に進まれましたか?
これも東北大震災が始まりで、被災地のボランティアをしていた当時、地方のコミュニティが無くなっていくというのを目の当たりにしました。震災自体のダメージもですが、その後の風評被害もあって、地方活性化に関していろんな人と話す機会が多くなっていきました。
当時、地方活性化というのは日本ではまだマイナーでしたが、ヨーロッパだと20年程前から盛んに行われていて、モデルも確立されている分野なんです。特にフランスでは、人口3人だけど年間の観光客が500人というようなおもしろい村がたくさんあって。私がそれを学んで、そのことを日本に持ち帰ってくるだけでも、地方の人にとっての新しいアイディアの発掘につながると考えました。地方活性化の研究と、英語以外にも言語を勉強したいという思いから、フランス語を学べる大学に進学しました。
そこから富士吉田への移住にはどうつながるんですか?
大学時代にもフランスへ約2年間留学し、そのまま現地の大学院への進学を考えていたんですが、社会経済的に不安定な情勢から計画を一度断念しました。卒業後タイミングよく外資系の会社に就職できましたが、2年経っても気持ちが残っていて。そしてコロナ禍によるオンラインの推奨がフランスの大学院でも始まりチャンスだと思いました。授業時間の時差を克服するためにもフレックス勤務しながら地域活性の研究ができるという視点で選んだのがドットワーク富士吉田での勤務と富士吉田への移住だったんです。
研究にはフィールドワークも必要ですが、富士吉田の街の規模感とか地理的な条件が研究対象として理想的でした。ここで、データを集めつつ、山梨県全体のデータも収集して、仕事の内容にもその研究内容を反映させることができるという、まさに完璧な環境だったんです。
働かれながらの大学院での研究は大変そうですね
サマータイムのときは、4時半ぐらいには自宅に帰っていました。4時45分に家着いて、そこから 8時45分ぐらいまで授業を受けます。その後にご飯作ったりとか家事をして、9時過ぎから勉強再開。論文作成やMBAの勉強を12時ぐらいまでしています。実は並行してアメリカの大学院でもMBAを勉強しています。最初の1,2ヶ月は本当にしんどかったですが、仕事や日常でそのアウトプットができることがとても嬉しいです。
それにヨーロッパ文化の素敵なところだと思うんですが、人の中身を成熟させるために生涯学習や日常的な思考、政治に対する意見を持つ教育をみんなが受けていています。年齡を重ねる中で、その人の培ってきたものが光った上での美しい外見ってすごく良いと思って。自分も歩みを止めないで、一度挑戦してみようというスタンスで、この生活をはじめました。
▼北田さんから見た富士吉田とは?
北田さんから見た富士吉田はどんなイメージですか?
当初の狙い通り、研究に本当に適している地域だと感じます。規模感などの条件はもちろんですが、地元の人も素直に話してくれる人が多いので、フィールドワークとして生のデータが集めやすいのは助かります。将来的には今学んでいるマーケティングやマネジメント、地域活性化に関する研究を併せた地方DXなんかに取り組んで行きたいですね。
移住者としては、もともと本州で一番面積の広い岩手県の出身なので、お店や施設などがコンパクトにまとまっている富士吉田の街は住みやすいです。そして私が以前住んでいた盛岡市はどこからでも岩手山が見えましたが、この富士吉田ではどこからでも富士山が見えるので、生活に山のある風景が重なって、早くも第二の故郷のように感じています。ただ、歩行者優先とは言い難い独自の交通ルールも感じるので、そこに慣れるまでは注意が必要だと思いました。
▼富士吉田がもし、まるごとサテライトオフィスになったら…こんなことが起こる!と期待していること
富士吉田がもしまるごとサテライトオフィスになったとしたら、どんなことが起こると期待していますか?
まず教育が変化すると思います。色んな業種の人が交流することで、おそらく新しいビジネスが生まれますよね。人って実際に実現したものを見ないと想像が働かないと思うんです。だから逆に新しいビジネスが生まれれば、学生たちが刺激を受けるし、街の規模感的にも学生が関わりやすいと思います。
私は学生の時の原体験が一番大事だと思っているので、そこで感じた驚きや可能性は将来的に街を活性化できる人材としてリターンされると期待しています。そしていろんな場所で人と人との化学反応が起きるようになると、この富士吉田の街がまた新しい段階に生まれ変わるんじゃないかと予想していますし、それを実現するために頑張りたいと思っています。
北田さんからのメッセージ
今の生活に疑問があったり、不安があったり、そもそも週5で働く生活とか、色んな社会の基盤に対して、なにか思うことがある人と是非話したいと思っています。何か世の中を変えたいと思っている人、そこに踏み出せない人こそ繋がりたいです。それが地域活性化のスタートで一番大切なことだと思っているので。DMでももらえたら嬉しいですし、ドットワーク富士吉田やドットワークBARにも是非遊びに来てくださいね!
◯「富士吉田まるごとサテライトオフィス」構想とは
「富士吉田市内をまるごと使ってテレワークできる環境を整えよう」という構想です。
日本は新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの企業やオフィスワーカーに「在宅勤務」が推奨されて来ました。しかし、自宅で働くことに息苦しさ・やりづらさを抱えている人たちの存在は今や社会的な問題です。
そこで当社は山梨県の富士吉田をモデルタウンに「日常型ワーケーション」を提案しています。日常型ワーケーションとは、日中は通常勤務のようにしっかり仕事をして、仕事の前後の時間(朝・夕方〜夜)に地域の魅力に触れられるスタイルです。
このスタイルは、作業環境の変化による生産性の向上のほか、地域の魅力に触れる機会の創出や、常に変化を感じる生活のなかで発想力・企画力などのクリエイティビティが培われるというメリットがあります。
富士吉田は新宿から1時間強と好立地ながら、富士山が目の前に広がる絶景地。当社は富士吉田でワーケーションができる仕組みづくりに取り組んでいます。まるごとサテライトオフィスの富士吉田をぜひ体験してください!
◯富士吉田まるごとサテライトオフィスで取材に応じてくださる方を集しております
「地域活性や街づくりに興味がある!」
「今こんな活動をして街を盛り上げている」
「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」
「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。
ひとつでも当てはまったら是非ドットワークBARにいらしてください!
記事執筆/宮下 高明