子供も大人も初心者も!誰でも歓迎のお絵かき教室を開催する漫画家/イラストレーターのお二人『黒島優午・伶子』さん

広告、アプリ、ポスター、ゲーム。私たちが生活する上でイラストレーターが手がけた作品を見ない日はありません。絵をうまく描けない人からすると魔法使いのような彼らですが、子供にも大人にもお絵描き教室を開いてくれるプロの漫画家/イラストレーターが富士吉田市に移住してきてくれたことをご存じでしょうか?今回インタビューしたのは、東京から山梨に移住してきた漫画家/イラストレーターである黒島優午さんと伶子さんのお二人!プロのクリエイターとして活躍されるお二人のご経歴や富士吉田市の印象、まるサテが進んだ富士吉田市の未来像などを聞きました!

▼黒島優午・伶子さんが富士吉田市と繋がるまでの経緯

インタビューに答えてくださった黒島優午さん(左)と黒島伶子さん(右)
本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくおねがいします。

まずは黒島伶子さんのご経歴を教えていただけますか

自分は沖縄の宮古島出身で、大学進学のタイミングで上京してから7年半ほど、東京にいました。それから一度地元に戻ったものの、アニメーションを勉強したくてアメリカへの留学も経験しました。帰国後は、イラストレーターに限ったことではありませんが、自分のスキルを高め続ける必要があって、何かと都合の良い東京に戻ることに。そこから富士吉田市に移住するまでは東京で暮らしました。

イラストレーターになったきっかけは、自分が高校・大学時代のときにまで遡ります。当時は、精神的にすごく落ち込んでいた時期があって。自分が生まれ育った環境と都会での暮らしにギャップがありすぎて、人間関係もうまくいかないことが多かったんです。そんな時にアニメーション作品、特にジブリ作品が自分をすごく助けてくれたという経験から、アニメに興味を持つことになりました。アメリカに留学して、自分はどうやら絵を動かすアニメーション自体には興味がないということがわかったのですが、昔から描いていた絵は変わらずに好きだったので、それを仕事にし始めたのが今のキャリアの始まりになります。勉強だけは独学で続けていました。現在は、ご縁があって京都芸術大学の採点講師の仕事をしたり、知り合いの方から絵の依頼をもらったりしています。

 

優午さんはいかがですか

私は、女→男のトランスジェンダーで、誰にも相談することができなかった小学生の頃は、赤いランドセルを上着で隠して小学校に通っていました。そんな中で、同級生の男の子たちと友達になりたくてジャンプの漫画の絵を描き始めました。しかし、中学生になって制服のスカートを履かなければならなくなり、家庭も別件で荒れ、どんどん内気になっていったんです。絵を描くのは好きではなかったけど、自分に残っていたのが絵しかありませんでした。どうにもならない気持ちを絵や漫画で表現して、いつかどこか遠くの誰かに届くことを夢見ることで救われていました。

学生時代から少しずつではありますが賞もいただき、高校卒業後はすぐ上京することに。しかし、慣れない環境や悲惨なニュースに対する職場の方達の心無い発言などが自分に合わず、だんだん居づらくなってしまったんです。その後引きこもって、メンタルもインタビューではお話しできないような状態にまでなってしまったんですが、そこから一念発起してなんとか持ち直してきたという経緯もあります。そんな経験から、自分がかつて絵を描くことで救われていたように、同じような辛い思いをしている人に絵を通して「大丈夫だよ」って伝えたいと思うようになりました。

インタビューに答える黒島優午さん
お二人はどこで出会われたんですか?

絵の上達を目指すワークショップに参加したことがキッカケです。そこでSNSを交換して、お互いに興味はあったんですが、リアルで初めて会ったのはコロナ前でした。動物園にスケッチに行ったりとか、共通の知り合いとご飯を食べに行ったりとかしたんですが、コロナ禍になって、しばらくは会えずにいました。

それでもお互いの空気感が近くて、連絡を取り合っていたんです。私たちが行っていたワークショップは真面目な方が多くて、苦しくても毎日頑張ろうみたいな感じだったんですけど、私たちは描きたくない時は描きたくないよねって。頑張って技術が上がったら、描けるものも増えるし、楽しいんだろうなとは思うんですよ。ただ、それが最優先事項になった瞬間に、おそらく絵を描くのが好きじゃなくなるんじゃないかと思っています。それこそ絵を描くことと楽しく長く付き合っていきたいというスタンスが一緒だったのは大きいかもしれません。あとはラベリングされるのが嫌というか、◯◯なら△△みたいな決めつけが苦手という共通項もあったりします。

そんな私たちですが、実は付き合い始めたのも一緒に住み始めたのも富士吉田に来てからなんです。共通の友人と一緒に遊んでて、新居はどうしようかなって相談してたところに「ちょうどお互いの引っ越しが重なりそうなら一緒に住んじゃえば?」って友人に勧められたのがキッカケなんですよね。ただ、それぞれに富士吉田市への興味の持ち方っていうのは違っていて。

インタビューに答える黒島伶子さん
どのように富士吉田市への興味が違ったのか、優午さんからお聞きしていいですか?

私の場合はお話しした通り、一時期、それこそ生きているのが嫌だと感じるような病み方をしていたことがあります。職場の人とはすごく仲良くなって毎日楽しいんだけど、その時ちょうど絵を描くのをやめていて、自分の中で溜まったいろいろなものにどうしようもなくなって相談した友達が、富士吉田市に住んでいたんです。そこで「遊びに来なよ」って言ってくれたのが最初に富士吉田市と結ばれたキッカケです。初めて富士吉田市で丸一日過ごした日、夜がちゃんと静かで暗かったことに心から安心したのを覚えています。移住してきてからは夜にぐっすり眠れるようになりました。

 

伶子さんはどのように富士吉田市をお知りになったんですか

知人から「富士吉田市の地域おこし協力隊が面白い」という話を聞いたのが富士吉田市を最初に知ったキッカケですね。自分の地元である沖縄県も移住者が多くて、地域おこしの活動も盛んではあります。ただ残念なことに、一部では移住者だけで盛り上がってしまっているパターンもあり、地元の方と移住者の方がうまく関わり合えていないような印象を受けています。その土地柄から憧れて来る人も多く、そんな人たちだからこそ一生懸命に盛り上げようとしてるんだけど、地元の人からすると”沖縄”という地名を前に出すだけで、地域の人々が置き去りになっているから、実際にはどんな人が移住してきているのかわからない、みたいな。そんな中で富士吉田市は移住者と地元の人がお互いにうまく関わりあって地域おこしが進んでいるということを聞いていました。実際に移住して、その空気感を実感しています。

▼お二人からみた富士吉田市の印象

移住者の視点から富士吉田市の印象を語るお二人
実際に住んでみていかがですか?

良い意味で適当な感じというか自然に時間が流れているような気がします。通常営業しているはずの時間に、全然普通に家の用事で閉まっているお店があるとか、美容室とかも今日予約したいんですって電話したら「昨日休みだったけど、その日にお願いしたいっていう知り合いが多くてお店を開けたから、今日は代休です」とか。東京には無いゆるさがあって、それは不便さもあるけど、ガチガチな感じではない居心地の良さがあると思います。

それに自然と一緒に住んでるっていう感覚が強いんですよね。人間と自然がはっきりと別れてない、人間が自然をコントロールしようと思っていないというか。街のどこでも水の音が聞こえたり、どこからでも富士山は見えるけど、場所によって日によって、その表情が違ったり。都市は、そういった情緒のようなものは感じづらいので、息の抜き方が上手じゃないと、息が詰まっちゃいますよね。

それに人と人の関係性というか距離感も、ベタベタしてなくてサラッと優しいみたいな。 お年寄りや子供への優しさもすごく感じます。以前私が住んでいた場所で、障害者であるとか、お年寄りを戦力外扱いとは言わないまでも、結構冷たい感じを経験したことがあったんです。その点、富士吉田市はありえないほど優しいです。開覧板が回ってきてなんだろうって思ってみたら、小学校の下校時間が書いてあって「見守りをお願いしますね」みたいな。思わず表情も綻びます。さらに人といえば、移住者やその方達の活動、地域おこしが面白いと思います。ここに移住したくなった理由の一つが、地域おこしの活動や移住者と地元民の距離感の近さです。ここは移住者と地域の方がうまく混ざってますよね。 だから、安心して地域に溶け込めるし、その後もちゃんと楽しい。そんな良さが富士吉田市にはあると思います。

 

お二人の活動についても教えていただけますか

地方に移住した漫画家/イラストレーターとしてどう生計を立てていくのか奮闘中です。二人とも京都芸術大学のクロッキーを採点するお仕事をいただいたり、クラウドワークスのようなところで、お仕事をもらったりしています。知り合いづてにTシャツデザインやウェブデザインの案件をいただくなど幅広く活動しているので、試行錯誤しながら今後も仕事の幅を増やしていきたいと思っています。

その他に、富士吉田市にきて始めたのが『お絵かき教室OKOK』です。決まったことをやるんじゃなく、集まるメンバーに合わせて、やることを考えていけるお絵かき教室にしたくてこの名前にしました。例えば「服のシワをかけるようになりたいよ」とか「ドラゴンが好きだよ」とか。最初は子供向けでやろうと考えていましたが、 もう大人も参加できる方は是非!っていう感じにしました。毎週木曜日の週一回、ソーシャルハウス宝島でやっているので、ぜひ興味がある方は覗いてみてください。

お二人が開催するお絵描き教室のパンフレット

絵の世界ってマーケットイン(市場や顧客の立場に寄り添いながら、市場が必要とするモノを提供していく姿勢)になればなるほど、上位の人間だけが勝てるみたいな上下の構造が出来上がってしまっているんですね。そのため、私なんか下手だから寝ずに描かなきゃいけないとか、頑張ってもあいつの方が上手いから無理だみたいな価値観が蔓延しているように思います。プロの世界なので仕方ない面もありますが、元々絵を描くのが大好きで仕事にした人が多いと思うんです。誰でもいろいろな情報に簡単にアクセスできるようになって、短期間でプロ級の絵を描けるようになるすごい人もたくさん見かける世界ですが、子供のうちから上手い下手ばかりに囚われないよう、本来の絵を描くことの楽しさやアイディアの発想の大切さを伝えていきたいです。そんなつもりで初めた教室ですが、みんなの個性豊かな発想が本当に面白くて、逆にこちらが教わることばかりです。

上手い下手の二元論じゃなくて、好きなものをそれぞれ表現するツールとして絵を描き続けたくなるような場所にしていきたいです。その表現こそが、自分自身への肯定であり、自分の居場所を作る方法だと信じています。

 

▼富士吉田がもし、まるごとサテライトオフィスになったら…こんなことが起こる!と期待していること

黒島伶子さんの作品(左)と黒島優午さんの作品(右)

 

まるサテがどんどん広がって、いずれ海と山の地域で繋がってほしいと思っています。ビジネスマンでも学生でもいいんですが、自分が暮らしている環境と全く違う場所で感じる何かも、きっと自分の中で蓄積されて、それがいつかインスピレーションを生んだりします。普段は山に囲まれているのに、周りに山がなくて空が広く見える体験とか、波の音じゃなくて虫の鳴き声を聴きながら眠りにつくとか。仕事をしながら、あるいはオンラインで授業を受けながら、という日常は残しつつも、非日常があることによって、環境や人といった対外的な交流だけではなくて、自分の中での新しい出会いも生まれる取り組みじゃないかと思います。

そして、そんな生活が身近になることで内気な人たちももっと外に出やすくなるというか、活動の範囲が広くなるような気がするんです。私も知らないお店に入れないくらい内気ですが、そういう人にとっても「まるサテの提携施設なら入っても大丈夫」みたいな。まるサテが広がることで、ちょっぴり冒険できる世界になっていったらいいなと思います。

▼黒島優午・伶子さんからのメッセージ

いろいろな人と絵を描いてみたいです。その人が何を感じて、それをどう表現するのかに興味があります。そして、面白いことを一緒に考えたり、アイディア出しを競争したり、そうやって絵を描くことを通じて、絵を描くことの楽しさ、表現することの面白さ、自分自身に対する肯定感を育てていけたら嬉しいです。『お絵描き教室OKOK』は、ソーシャルハウス宝島で毎週木曜日の夕方からやっています。興味がある方はぜひ遊びに来てくださいね!

『お絵描き教室OKOK』

日時/毎週木曜開催 16:15〜17:45

場所/富士吉田市竜ヶ丘3-2-3 ソーシャルハウス宝島

ご質問・お問い合わせは下記QRまでお願いします。

◯ 「富⼠吉⽥市まるごとサテライトオフィス」とは

「富⼠吉⽥市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は⼭梨県富⼠吉⽥市全体を使って、様々な事業者が富⼠吉⽥市内に⾃分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を⼿軽に持つことができる取り組みです。
(詳細: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

 

◯ 富⼠吉⽥市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる⽅を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている⼈がいるので記事で紹介してほしい」

「⾯⽩い構想があるのでこんな⽅と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是⾮ドットワークPlusにいらしてください!

記事執筆/宮下高明