暮らしの課題をデジタルの力で解決!
地域の未来を創るI T会社『C-table』代表・田邉耕平さん

2008年を境に人口減少が続いている日本。「このままだと経済は萎む一方」だと言われています。10年後も20年後も良い社会であるための手段として、DX推進が急がれています。そんな需要が高まるデジタル市場で、暮らしに寄り添った地域のデジタル化を進めるのはIT会社『C-table』。富士吉田市の隣、都留市に拠点を置き、地域の人々の暮らしを一つひとつ便利に変えている会社です。今回はC-tableの代表を務める田邉耕平さんにお話を伺いました。身近な人の声をヒントに、より良いシステムをつくったり、地域のデジタル人材を育てるために同業他社とタッグを組むなど、リアルな繋がりを大事にされている田邉さん。地域の未来を支える新事業についてもお話いただきました。

I Tの枠を飛び越えたボーダレスな仕事

インタビューに応じてくださった『C-table』代表取締役・田邉耕平さん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

富士吉田と田邉さんのご関係を教えてください

自宅もオフィスも隣の都留市なのですが、富士吉田は親戚がいたり、買い物に来たりする場所でしたね。ですが、キャップクラウドさんとのつながりができて、うちの会社の技術面や組織作りのアドバイスをしてくださっているエンジニアの西見さん(Edged Edge代表)がドットワークPlusのビジサポメンバーということもあって、仕事面でも富士吉田とのつながりができました。(西見さんのインタビュー記事はこちら ▶︎ https://marusate.jp/marusate_interview_2

今後、都留市や富士吉田市といった枠を超えて、この地域でデジタル人材を育成していくプロジェクトが始まる予定なので、富士吉田との繋がりはこの先増えていきそうです。

 

現在どのような仕事をされているのでしょうか?

『C-table』は「半径1メートルの明日から未来を変える」をコンセプトにして、民間企業や自治体のDX推進及びシステム開発、プロダクトの企画開発・販売、デジタルマーケティングの支援、起業サポートなどを軸に活動しているIT会社です。『一般社団法人まちのtoolbox』というまちづくり組織と一緒に、山梨県の事業『地域課題解決型起業支援金』や、都留市の事業『ビジネスプランコンテスト』など、コンテストの企画から採択者の伴走(起業のサポート)まで関わらせてもらっています。

ふるさと納税返礼品として開発した『都留の炭ナッツ』は食べるだけで自然保全にも(提供写真)

 

DX推進やシステム開発でのエピソードがあれば教えてください

都留市が運営する体育施設の予約をデジタル化した事例があるのですが、それは印象に残っていますね。うちの会社にインターンで来ていた大学生の一言から生まれたプロジェクトなんです。せっかくインターンで来ていたので「何か課題はない?」と聞いたら、「彼氏がサークルで使う市民体育館を予約するために30分かけて市役所に行っている」と。授業の合間を縫って毎回行くのは億劫だってことを聞いて、それじゃあオンラインで予約できるシステムを市に提案してみようかって。それが始まりでした。実際に運用され始めたら、大学生だけでなく“今まで半休とって予約に行っていたから助かる”という会社員の方もいるなど、意外にも反響が大きかったんです。今では8割くらいの方がオンライン予約を使うようになりました。これまで当たり前だと思っていたことは、ひょっとしたら当たり前じゃないのかもしれないと思うようになり、市民の声を聞いて、“暮らしの中の不便を可視化して新しい当たり前を創る”という仕事をしたいと思うようになりました。

実はこれには裏話があって…。企画を持ち込んだとき、市役所の方が「ずっとやりたいと思っているけど、どの会社に見積もりをもらっても予算オーバーで実現できずにいる」と言っていて。でも、僕らが聞く限りそんなにお金がかかるものじゃないと思ったので引き受けることにしたんです。それが実際にやり進めてみたらとにかく大変だった。割引の条件や過去の利用実績、大会を控えたチームの優遇など、顔が見えるからこそできる調整業務があるのですが、それはシステム化するにはあまりに複雑すぎて。それでも「やるしかない!」って意地で最後までやりました。

元々お肉屋さんだった建物をリノベーションしたオフィス(提供写真)

 

そんなハプニングはあったけど、出来上がって使ってもらったら本当に便利だと反響をもらえた。それに、社員の妻が子どものスポーツ少年団の予約で実際に使ってくれていて、「便利になった」とか「ここが使いづらい」とかクレームを言ってくるんです。それがすごく面白いなって。これまで自分が作ったシステムが日々の暮らしに具体的な影響を与えるっていう実感をなかなか得られなかったのですが、ユーザーが隣近所にいるっていうことの面白さ。それが今のやりがいに繋がっています。このプロジェクトをきっかけにいろんな市民の声が聞こえてきて次のプロジェクトに繋がったりもしたので、まずはやってみることが大事だと実感しました。

 

地域に根付いた会社だからこそユーザーのリアルな声が聞けるんですね

はい、そこに面白さを感じます。他にも身近な声から生まれたアイデアは色々あります。「新聞のお悔やみ情報をもっと気軽に知りたい」というおじちゃんがいたら、LINEで配信するシステムをつくったりしました

地域の仕事をいろいろやってきてわかったのは「市役所に行く時間を省きたい」という人がほとんどだということ。生活者の視点でいうと当たり前なんですが、市役所の職員からすると意外な盲点だったりするんですよね。そういったことが定量的に可視化されていきました。そうやって、自治体と住民と連携して、地味ではあるけど少しずつ着実に便利にしていってるところは嬉しいしやりがいです。

入り口の目を惹くのれんは地元の『槙田商店』による郡内織(提供写真)

 

まもなく始動!広域でのI T人材育成

 

事業について教えてください

これはまだまだ詰めている段階なのですが、ひとつ言えるのは“地域の中でデジタル人材を育てていこう”というのが大きなテーマということですね。いろいろな調査がありますが、この先デジタル市場は2030年くらいまでに約3倍になると言われているんです。人口減少が加速する中で、人がやらなくてもいい仕事をどんどん機械に任せていく必要があるし、それを一部のエリアだけに留めるのではなく、広く活用されていくことも重要だということが大前提としてあります。そんな中で、富士吉田や都留も人口減少は避けられない。いくら移住者が来てくれても、です。都留市の場合だと、2040年までに人口が今の3分の2に減少するという予測がある。お店をやっていても売り上げが3分の2になるし、働く人も3分の2になるということですよね。そういう世界で、どうデジタルを活用して10年後もいい街をつくっていくか、未来に残していくかっていうことが、今すごく重要なテーマだと思っています。

なので、デジタル化を推進していく活動が必要なのですが、そこで一番ネックになるのがデジタル人材と言われるエンジニアとか、デジタル活用の提案までできる人材がいないということ。いたとしても、だいたい都内の大きなIT会社に入ってしまいます。デジタル人材がいないことにはデジタル化は進まないので、そういう人を地域の中でちゃんと育てていくのが喫緊の課題です。ただ、何事も少し学んだだけでは身にならないですよね。3年くらいはいろんなことを経験して、やっと少し成長するものだと思うので、地域の若い人たちにも成長する機会をしっかりつくってあげたいです。うちの会社だけでそれをするのは限界があるけれど、Edged Edgeの西見さんや、キャップクラウドさんと一緒に地域で育てていって、さらに、成長してからも一緒に仕事ができたらものすごくいいなって思います。

 

どんな形で学べるのでしょうか?

これもまだまだ構想段階ではあるのですが、基礎的なプログラミングなどを学びながら、実際に仕事を一緒にやる機会をつくっていきたいと思っています。最初はホームページひとつつくるだけでも難しいものですが、それを一緒に教えてもらいながらつくれたら経験値が大きく上がるし、そうやって少しずつ独り立ちするためのサポートをしていきたいですね。独立後も、一緒に地域を盛り上げていくというのが理想です。

“共に学び、共に創る”がコンセプトの『ドットワークPlusLab』にて

 

田邉さんが感じる「地域の魅力」と「まるサテに期待すること」

 

今の会社を立ち上げる以前は、どちらを拠点にされていたのでしょうか?

都留市で育って、大学進学を機に東京に行きました。そのまま就職も結婚も都内です。子どもが生まれて、そろそろ家を買いたいと思ったタイミングがあったのですが、都内でマンションを探しても、価格や間取りに対してなかなか納得がいかなかった。その時に親戚のおじさんに言われたんです。「どこに住むか?も大事だけど、誰と住むか?も大事だよ」って。それで「そういえば地元ってどうなんだろう」って。子どもを自然の中で育てたいという思いもあったし、都内に通勤できない距離ではないから、地元に帰っちゃおうってことになったんです。

その時は職場が溜池山王にあって、片道2時間半くらいかけて通っていました。今みたいにリモートワークが浸透していなかったので、自分だけ出社時間を遅らせてもらってなんとか通勤していたんです。だけどそのうちに“1日5時間電車の中にいる人生ってどうなんだろう?”って疑問に思うようになって。少しずつ出社する回数を減らしたり、委託業務にしたり、形を変えながらやっていました。それで移住から約1年後の2017年に会社を設立しました。

 

田邉さんにとって地元・都留市や富士吉田の魅力はどんなところでしょうか?

とにかく水が美味しいです!富士山の麓だから、蛇口をひねれば美味しい水が飲めるんです。水が美味しいとお米などの農作物も美味しく育つので、つまりなんでも美味しいということですね。コーヒーだって美味しく淹れられる。あとは東京も近いですし、優しい人が多いんですよね。この辺りは観光客が来たり、大学があるから引っ越してくる人も多い。外から人が来ることに対してウェルカムな雰囲気を僕は感じています。

それから、子どもがいる立場からすると、子育てしやすい場所ですね。都内でマンション暮らしをしていた頃は、子どものバタバタという足音がしたら下の階からクレームがくるし、そうならないようにクッションフロアを大量に買って床に敷き詰めたりもしました。だけど、子どもに静かにしなさいというのも違うよなっていう思いがあったんです。山梨に来たら、「静かにしなさい」って誰も言わないですね(笑)

子どもに対する周りの眼差しがすごく優しいんですよ。ある日、子どもが紫陽花の花を手に持って学校から帰ってきたことがあったんです。「通学路でおじちゃんがくれた」って。そうやって自分の子どもの登下校を暖かく見守ってくれている人がいるんだと、ありがたい気持ちになりましたね。でももし都会で同じことがあったら、「大丈夫か?どこで誰にもらった?」って心配していたと思うんです。素直にありがたいって思えたのはこの場所だからですね。

 

今後、まるサテに期待していることがあれば教えてください

地域の若い人たちがドットワークPlusに集まって、自分たちと一緒にいろんな経験や仕事ができるような場になっていくといいですね。今うちの会社でアルバイトをしている高校生がいるんです。お問い合わせフォームから“エンジニアになりたい”って連絡をくれたのがきっかけで。実際に話してみたら、センスもいいし自分で考える力もある。彼の場合はたまたま家が近くだったこともあり、こうやって経験が積めて、自分のキャリアについて考えることもできたんですけど。実は彼のようにプログラミングやコンテンツクリエイターを仕事にしたい人って多いんじゃないかと思うんです。ただ機会がないだけで。なので、ドットワークPlusは若い人たちがいろんな仕事に触れて、“これでご飯が食べていけるんだ”って思える場になったらいいですね。これから伸びていくデジタル市場の中で、若い人たちがキャリアをつくるきっかけになることを期待しています。

ドットワークPlus Labのスペースで仕事をする田邉さん

 

田邉耕平さんからのメッセージ

僕のような仕事は家でもできます。だけど、あえてドットワークPlusのような場に行くことで、たまたま繋がったり、新しい気付きをもらったり、逆に自分が誰かの気付きになったりすることがあると思うんです。なので、少しでも気になっていることがあれば、実際に足を運んでみてください。想像しなかったような繋がりができて、それが何かのきっかけになるかもしれません。普段家でやっている仕事を持って気軽にきてみてください。

 

C-table株式会社
https://c-table.co.jp

 

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。

(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

 

富士吉田市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる方を募集しております。
「地域活性や街づくりに興味がある!」
「今こんな活動をして街を盛り上げている」
「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」
「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークPlusにいらしてください!

写真・記事執筆/高井まつり(KINONE)