パーソナルライフの変化が“在り方”を見つめ直すきっかけに。
富士吉田歴10年のユミ・マトソンさん

ロッキー山脈の麓にあるアメリカ中部の都市、コロラド州。そのコロラド州に富士吉田市の姉妹都市、コロラドスプリングス市があります。1962年に姉妹都市締結をして以降続いてきた交流ですが、今回はそのコロラドスプリングスで育ち、現在は富士吉田で暮らすユミ・マトソンさんにお話を伺いました。東京の大手IT企業『アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社』に勤めるマトソンさんは、ドットワークPlusでリモートワークをされている日も多く、そこで行われるイベントにも積極的に参加してくださっています。そんなマトソンさんが日本で暮らすようになったきっかけから、富士吉田の人々に感じた印象まで赤裸々にお話しいただきました。3歳のお子さんの子育てに対する思いや、今感じるご自身の課題についても伺っています。

アメリカから日本へ!移住に踏み切った理由

インタビューに応じてくださったユミ・マトソンさん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

これまでのご経歴を教えてください

生まれたのは日本の熊本県で、育ちはアメリカのコロラド州です。私が住んでいたのはコロラドスプリングス市というところですが、富士吉田市と姉妹都市締結している市だったんです。両親も私が幼い頃から富士吉田との交流事業に関わっていて、うちがホームステイ先となり日本人を受け入れたこともありました。私が大学を卒業する頃、富士吉田市役所で国際交流員として働ける人を探していて。それも、できればコロラドスプリングス出身で日本語もできる人を探していると。なかなか限られていますよね(笑)それで、両親が関わっていた日米協会の知り合いから「富士吉田市役所で国際交流員として働きませんか?」とお声がけいただきました。大学院への進学も検討していましたが、「今行かなかったら次のチャンスはきっとない」と思いましたし、自分にあるスキルを活かせる仕事だと感じたので思い切って日本に行くことにしました。それで2013年の夏から富士吉田市で働くようになりました。もしそのタイミングで決断しなかったら、一生日本で働くこともなかっただろうし、日本語もあまり話せないままで人生進んでいた気がします。勢いは本当に大事だと思っています。考えすぎると何も行動できなくなるので、それは常に意識していますね。

アメリカで過ごした幼少時代のマトソンさん(提供写真)

日本語はどのように修得されたのでしょうか?

家では日本育ちの母が徹底して日本語で話しかけてくれていました。私が成長するにつれて受け答えが英語になってしまったので、日本語は耳で聞くことはあっても何年も話すことはしていなかったですね。大学時代、交換留学で半年だけ京都にいたのですが、そのときも英語圏の友人が多かったこともあり、あまり上達しなかったです。なので、市役所で働き始めた当初は日本語にまったく自信がなくて…。働いているうちに徐々に日本語が磨かれていったように思います。

 

出産と転職を機に変化したパーソナルライフとは

 

転職されたきっかけを教えてください

2020年に子どもを出産したことで「ちゃんと長期的な人生の計画をしていかないと!」と火が付いたと言いますか。家庭を持ったことでより安定した生活を築きたい気持ちが強くなりました。市役所の仕事はいろんな学びや気づきを得られたけれど、国際交流員は一年ごとの契約でしたし、子どもが小さいうちは毎週のように風邪をひいて休まなければならないことも多かったので、あっという間に欠勤が増えていく状況でした。そんなこともあり転職を決めましたね。その頃ちょうどオリンピックやラグビーのワールドカップがあり、富士吉田市ではトレーニングキャンプの誘致をしていたので、転職のタイミングを計っていました。それでこれらの事業を終えた頃に『AWS(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社)』に転職しました。

転職により何か変化はありましたか?

長期的なキャリアということだけでなく、働き方が大きく変わりました。東京の本社に週に1〜2回ほど出社する以外は、基本的にリモートワークです。大体ドットワークPlusを利用させてもらっています。部署にもよると思いますが、私のポジションはプロジェクトマネジメント系で、日々グローバルに連絡を取り合うような業務内容なので、どこにいても仕事ができます。子どもはまだまだ小さいですし、今の自分にとってはとてもしっくりくる働き方ですね。最近は出社する人もかなり増えてきていますが、コロナ禍に地方に移住した人も多くいます。私も富士吉田に住みながら働けていることを誇りに思っています。

多くの富士五湖では水面に映る“逆さ富士”が楽しめるという(提供写真)

パーソナルライフについてはどのように考えていますか?

まず「仕事がすべてじゃない」ということは今すごく自分に言い聞かせているところです。年齢やキャリアパス、子育てなど、客観的にみても今人生で一番バランスが崩れやすいタイミングだと思うんです。3歳の子どもはまだまだ目が離せないし、母親としても子育てに全力を尽くしたい。キャリアパスという面では、さまざまなプロモーションや今後のプランを立てるなど、忙しさとプレッシャーの中で働いている時期です。そんな中で「自分の時間をどうやって築いていけばいいのだろう」という課題に直面しているところです。リモートワークだと「自分の時間があっていいね」ってよく言われるのですが、出社していないというだけで自由な時間というわけではありませんよね。オフィスの席についていないから自由だと誤解している人は多い気がします。

パーソナルライフについて聞かれるとどうしても子どもがメインになってしまいますが、「今のこの子の姿は今しかない」って思うと、子どもと充実した時間を過ごすことを最優先にしたいですし、今は何よりも子育てを楽しくできる環境にいられることがベストです。それで言うと富士吉田は子育てにおいて最高の場所です。自然に囲まれているし、広々とした公園や親子で利用できる施設も多い。わざわざ頑張って遠出しなくても大人も子どももみんなが心地よく過ごせるのって良いですよね。よく行くのは『パインズパーク』や恩師林庭園内にある施設『キポキポ』、あとは河口湖にある『八木崎公園』。本当に恵まれた子育て環境です。

天気が良い週末は必ず家族で公園に出かけるというマトソンさん(提供写真)

母親になるとそれがアイデンティティになってしまうところがあるし、実際に今繋がっている人のほとんどは“娘の母親”として出会った人ばかり。だけど本当は母親以外のアイデンティティが必ず誰にでもあるはずですよね。仕事と母親のふたつでいっぱいいっぱいだったけれど、そのどちらでもない自分の在り方を再確認したいという思いが最近強くなってきています。自分の時間を持たない限り新しい出会いも生まれないので、気になっていた料理教室やヨガ教室に申し込んでみたり、来年に向けて小さなアクションを起こしているところです。自分を取り戻すと言うと大袈裟かもしれないけれど、これからはもう少し自分自身にも注力していきたいと思っています。

 

マトソンさんから見た富士吉田とまるサテ

 

富士吉田という街はどんな印象ですか?

私が育ってきたアメリカと比べると日本は文化や伝統が多く、この街の人も伝統を大事にしているのが伝わりますし、新しいものを取り入れるというよりも地域の文化を守りたい気持ちの方が強い印象があります。それに、どちらかというと保守的な人が多いので関係を作るには少し時間がかかります。それでも外国籍の私に心を開いてくれる人はたくさんいるし、信頼を得られればどんなときでも手を差し伸べてくれる。その方達のおかげで日本も富士吉田も好きになりました。この地域には思いやりのある人が本当に多いです。

それと、なんと言っても富士山は魅力的ですよね。10年も住んでいるのに毎朝窓から富士山を眺めて写真を撮ってしまうんです。日によっても時間帯によっても全く表情が変わってくるので「素敵だな〜」って日々癒されています。

ある日の富士山は「空中に浮かんでいるようだった」と写真を見せてくれたマトソンさん

マトソンさんにとってドットワークPlusはどんなところですか?

市役所で働いていた頃は常に周りに人がいて、コミュニティがあったり仕事関係の食事会もありました。ですが、転職を機にリモートワークがメインになって、これまで当たり前のようにあった人との関係性がなくなりました。寂しさや心細い気持ちになることもあったのですが、ドットワークPlusで行われたコーヒーイベントに参加したことがきっかけで知り合いができ、今までにない楽しみが増えたんです。そこに行けば必ず誰かが仕事をしていて自然と会話も生まれます。私と同じように子育てをしている人や共通点のある人も多く、今のライフスタイルを理解してもらえるのでとても居心地が良いんです。今では救いの場になっています。

ドットワークPlusにはイノベーションに力を入れている人が多く集まっているので、ここに通うことで自然とまちづくりに関する会話を耳にします。みんな動いているんだな、生きている街なんだなっていう実感を得ることができています。今は一市民として新たな目でこの街を見ることができるようになってすごく新鮮だし心地が良いです。

『紅葉line』と呼ばれるマトソンさんお気に入りの場所にて

まるサテプロジェクトに期待されることがあれば教えてください

この街の可能性や未来が感じられるプロジェクトであり、そこに集まる人たちもこの街を良くしていく人たちなんだなと側で見ていて感じます。引き続きそういう方達が集まれる場であってほしいし、さらに多様な働き方がここから広がっていけばいいですね。それぞれに合った働き方を見つけていく時代になってきているので、都心で働きつつ地方にも住んでみたい、子育てしてみたい、という人たちにもっともっとアピールして、私のようなワーカーを歓迎するような場所になっていってほしいです。外から来る人ほど、この街の良さをきちんと認識できる人っていないと思うんです。もっと外の人を呼び込むことで、地元の人は当たり前に思っているかもしれない地域の魅力を発信していける。まるサテプロジェクトやドットワークPlusはそういう人が気軽に集まれる場であってほしいと願っています。

ユミ・マトソンさんからのメッセージ

私が富士吉田に来たときがそうだったように、時には勢いも大事ですよね。何か少しでもやってみようという気持ちがあって、今がトライできるタイミングなのであれば、勢いで試してみるのもいいと思います。私のような外国籍の人でも受け入れてくれる親切な人がこの街にはたくさんいるので、ぜひぜひ来てチャレンジしてみてください。自然も豊かな場所なので、そういう面でも魅力的ですよ。

 

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
https://aws.amazon.com/jp/

 

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。
(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

富士吉田市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」
「今こんな活動をして街を盛り上げている」
「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」
「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークPlusにいらしてください!

写真・記事執筆/高井まつり(KINONE)