『河野保険事務所』の二代目として人々の安心と
富士吉田の発展に尽力する河野大介さん

多くの保険事務所が建ち並ぶ上吉田の昭和通り。ここに、昭和52年の創業以来、地元の人々が信頼を寄せる保険代理店『河野保険事務所』があります。「リスクマネージメントのプロフェッショナルとして、お客様に最高の安心を提供すること」を第一の使命に、50年近く続けてこられました。今回は、創業者である父親の後を継いで、二代目社長として会社を引っ張る河野大介さんにインタビュー。『富士吉田商工会議所青年部』の会長という大役を務められた河野さんだからこそ語れる、地域の魅力や課題についてもお話しいただきました。

地元・富士吉田に根付く保険事務所の二代目として

インタビューに応じてくださった河野保険事務所社長・河野大介さん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

現在の仕事に就かれた経緯を教えてください

今の保険事務所は、現在会長を務める私の父が始めた事業です。子どもの頃から父の仕事を側で見てきたので、自然と後を継ぐ意識が芽生えていきました。東京の大学を卒業後、そのまま残って保険会社で数年間は働きました。保険事務所は代理店のポジションで、商品を販売します。それに対して、保険会社というのは、保険商品の開発や、支払い業務がメインになります。私は自動車保険の部署で、解決・支払いの業務を担当していました。停まっている車に一方的にぶつかった場合はわかりやすいですが、中にはお互いに責任がある場合もありますよね。その時に相手の保険会社と交渉して弁償の割合を決め、お怪我された方がいる際は治療代を手配する、といった仕事をしていました。お金が絡むことなので精神的にも大変でしたし、同じ日というのは一日もなかったですね。

保険会社で数年経験を積んだあと、富士吉田に戻り父の後を継ぎました。保険は大きく区分すると生命保険と損害保険がありますが、うちではその両方を扱っています。損害保険というと、自動車の保険や企業の責任保険、あるいは美術品にかける保険もあります。もう一方の生命保険は、入院時の補償や重い病気にかかった際の補償です。こういった万が一のときの補償を販売しています。今はインターネット経由の保険も出てきていますが、世の中の保険市場の約90%以上は我々のような代理店を通して、皆さんに保険という商品を買っていただいているというのが現状ですね。

保険の営業というと飛び込み営業をイメージされる方もいると思いますが、ありがたいことに私の会社ではお得意様からのご紹介で新しいお客様に繋がっていくケースがほとんどです。すでにご契約いただいている方が、大きくなったお子さんと一緒にご来店されることもよくあります。子どもが巣立つタイミングで新たに保険を検討される方が多いので、特に3月は親子でみえる方が増えます。信頼していただけて、大変やりがいを感じますね。それに、この地域は義理人情に厚い方が多い。ここに限らず地方の傾向としてあるかもしれませんね。コミュニティが狭い分、どこの誰ということがわかるし、だからこそ結びつきも強い気がします。良いことも悪いこともすぐに広がる。そんな側面はあるのかなと思います。

大切にしているのは「売ることよりもまずは知っていただくこと」だと話す河野さん

8年前から務める専務・武藤さんとの出会いを教えてください

昔から私も武藤君も地域のボーイスカウトに所属していて、そこで先輩後輩として出会いました。私より7歳年下だから、子どもの頃から彼を知っていたし、人柄もよくわかっていました。保険代理店というのは解決をしていく仕事で、人としての誠実さ、わかりやすく伝える力、そして競争力も大切です。誠実な武藤君ならきっとお客様から声がかかるし、50年近く続く会社の看板を一緒に守っていけるだろうと確信し「うちの会社に入らないか」と声をかけ、承諾してもらいました。実のところ、ずっと前にも一度オファーしていたのですが、その時は前職への入社が決まったタイミングだったんです。それから数年経って再び誘ってみて大正解でしたね。今は専務としてうちの戦力になってくれています。

河野さんが熱い信頼を寄せる『武藤源輝さん』と

商工会議所青年部会長として奔走した一年間

商工会議所青年部の活動と会長になられた経緯を教えてください

商工会議所は商工業の発展や改善を目的とした全国の市町村にある組織で、青年部はその中にあります。青年部に所属するのは、経営者や個人事業主、または事業の主要な立場にいる50歳まで(地域による)の人です。全国に418ほどある青年部のうちの一つが、私が所属する富士吉田商工会議所青年部という組織ですね。会長の役職は一年ごとに変わっていくのですが、私も前任者からの推薦があり、令和2年4月から一年間、会長を務めました。

その頃も、当然のように事業計画や予算を立てるなど方針を決めていたのですが、いざ実行に移そうとしたその矢先に緊急事態宣言が。私が会長を務めたのはいわゆるコロナ元年で、何もかも自粛の世の中になり、会って会議もできない、総会もできない、という予想もしなかった事態になりました。事業予算を執行するための総会は必要不可欠でしたが、開催は断念し書面決議に。元々計画していた事業も変更を余儀なくされ、白紙の状態でまた一から考えることになりました。

オンラインで繋がることができるクラウドサービスが一気に浸透したこともあり、会議に活用したり、飲み会もオンラインで開催するなど、それぞれの家にいながら交流を深めることもしましたね。一方で、今までは直接会って、相手の反応や顔色を見ながらコミュニケーションすることが当たり前でしたが、リモートというのは画面の中にたくさん顔が並んでいる状態。そこから皆さんがどう感じているかを汲み取るのは非常に大変で、リモートの難しさも痛感しました。

青年部のメンバーとオンライン上でやりとりしていた当時の様子(提供写真)

コロナ前に計画していた本来やりたかったこととは?

当初は小学生向けの職業体験イベントを大きくやる予定でした。というのも、コロナ前に一番地域として困っていたことは人材不足だったんです。進学でいったん富士吉田を離れて、また数年後に地元へ帰って来たいと思っても「仕事がない」と言う若者が多いんですよね。けれども、働き手を求めている会社は沢山あります。そこでミスマッチが生まれてしまわないためにも、まずは子どもたちにこの町を好きになってもらって「帰ってきても働く場所がたくさんあるんだよ」ということを知ってもらいたかった。そんな想いから発案したイベントでした。中学生は夏休みに職業体験をするカリキュラムがあるし、高校生に対しても仕事を手伝ったり講演を聴きに行くプログラムを前々から青年部の事業として行なっていました。それに加えて小学生部門ができたなら、小中高の子どもたちが繋がって一緒に町の仕事を体験することができるし、お父さんお母さんの仕事をもっと深く知る機会が持てるかも知れない。そう思って、当初はキッザニア(リアルに近い職業体験が叶う施設)のようなものをイメージしていましたね。

その後制約のある中で軌道修正をされたのですね

当時、大きな公共施設も「定員の◯割以下」などと人数制限がありましたよね。ホールなどを使って多くの大人と子どもが一堂に会するというのは不可能だということになり、元々の計画は諦めました。では、それ以外で町のために何ができるだろうと考えたときに、やはり今求められていること、真っ先に必要なことは地域の人たちが元気になることだと思いました。日常が日常ではなくなり誰もが疲弊していたし、世の中全体に閉塞感があった。子どもたちも「萎縮して笑顔がなくなった」なんて言われていたので、娯楽という意味でドライブインシアターのイベントを開催することになりました。

『富士山パーキング』を会場に2本の映画が上映された(提供写真)

ドライブインシアターは、各々の車の中にいながら、一つの大きなスクリーンに映し出された映画を楽しめますし、ラジオの周波数を合わせることで音もしっかりと届けられます。商工会議所の会員でもある飲食店にお弁当やポップコーンを依頼して、それを車内で食べながら映画を楽しんでもらいました。当時、飲食店も大きな打撃を受けていたので、少しでも力になれたのはよかったです。市内には映画館がない上に、ドライブインシアターを開催した前例もなかったので、他の地域の情報を頼りに映画館や新聞社へ問い合わせをし、ご協力いただくことができました。子どもたちは久しぶりの開放感に喜んでくれましたし、子どもをどこにも連れて行けない日々が続いていた親御さんからも「身近で楽しむことができた」「また来年も開催してほしい」など、感想をいただきました。本来やりたかった教育や職業とは全く関係ないけれど、失われた日常の中で、束の間であっても楽しい時間を過ごしていただけたのならよかったなと思います。

河野さんから見た昔と今の富士吉田

今と昔で変わったと思われるところはありますか?

昔は商店街が沢山あり、肉屋、魚屋、八百屋など、特化したお店が並んでいました。それが今はすべてスーパーに集約されて一カ所で済むようになりましたよね。商店街が賑わっていた子どもの頃は、学校からの帰り道に花屋のおじいちゃんが「おかえり」と言ってくれたり、おやつをくれる人がいたり。商店街の中を通って帰っていたので、そうやっていろんな人と触れ合っていました。今は便利さと引き換えに、昔のような触れ合いはなくなってしまいましたね。

ですが、今も昔も変わらず富士山が間近で見られる点は、やはりこの町一番の魅力ではないでしょうか。いろんなビュースポットがあるけど、個人的には富士吉田市役所の東別館の階段から見える富士山が好きですね。窓からちょうど富士山が望めて、額装された絵画を見ているような気持ちになります。富士吉田は交通の便も良いので、都心から少し足を延ばせば風光明媚な景色を堪能してもらえるところも魅力です。

富士吉田市役所東棟の階段から見える富士山

まるサテプロジェクトに期待されることがあれば教えてください

二拠点生活や移住されてきた人の中には、地域のコミュニティに参加したいと思われている方もきっといますよね。ただ、どうしても田舎って閉鎖的と思われたり、地域コミュニティの結束力が強すぎることもあって、そこに大きな障壁を感じられるとも聞いたことがあります。元々いる我々は何も思っていなくても、そう見られてしまうことが交わりを阻害しているのではないかという気がしています。なので、機会があればこちらから働きかけもしたいですし、逆に声をかけていただくのも嬉しいです。この町でみんなが心地よく共存していけるよう、力になれることがあればいいなと考えています。あとは、ドットワークPlusは若い人が多くて、私のようなおじさんはちょっと入りづらいなって個人的には思っています(笑)

河野大介さんからのメッセージ

以前、テレビの取材でこの町を訪れた方が「若者に勢いがある町だと感じたから」と、取材に来た理由を教えてくれました。若者が減っている一方、町を盛り上げようという気持ちで動いている方も大勢いますし、移住してきてくださる方も増えています。長くここに住んでいる人間として課題と感じているのは、移住者と地元民の垣根。それを無くしていきたいです。接着剤のような立場で繋ぎ役になれたらと思っていますので、ぜひ声をかけてください。

(有)河野保険事務所
https://kono-hoken.co.jp/

 

 

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。

(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

富士吉田市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」

「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークPlusにいらしてください!

写真・記事執筆/高井まつり(KINONE