移住で人や仕事との向き合い方に変化。
リモートで働くエンジニアの齊藤大介さん

仕事は自宅やコワーキングスペースでのリモートワーク、プライベートではヨガにダンスと、アクティブに活動する齊藤大介さん。現在、富士吉田で充実した生活を送っている齊藤さんですが、実は昨年末に東京から移住したばかりだといいます。実際に引越しをするまでには2年ほどかかり、その間にお試し移住をするなど、何度か富士吉田を訪れていました。度々足を運ぶ中で、町に流れる空気や住んでいる人々の個性など、この町の特徴が見える場面に何度も出会ったそうです。そこで、今回は齊藤さんが移住に至った経緯、そして移住後の変化についてお話を伺いました。また、トライアンドエラーを繰り返しながらたどり着いた、リモートでの働き方のコツについても教えていただきました。

移住を決めたのは「なんかいいな」の積み重ね

インタビューに応じてくださったエンジニアの齊藤大介さん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

富士吉田に移住された経緯を教えてください

就職を機に地元の千葉県を離れ、それから長い間、東京で暮らしていました。胃カメラの開発などを行うエンジニアとして働いていたのですが、心の調子が悪くなったこともあり、14年間勤めた会社を辞めて一旦千葉の実家に帰ったこともありました。エネルギーが溜まって再び東京に戻ってからは、フリーランスのエンジニアとしてリモートで働くようになり、今は医療系ウェブシステムの開発に携わっています。少しずつ自分に合う働き方を確立する一方で、プライベートではいつの間にかモヤモヤとした感情が募っていきました。僕は昔から人と繋がることが好きで、そういう意味でもさまざまな習い事をしてきました。特にストリートダンスは長年続いていたのですが、元気になって数年ぶりに東京に戻った時には、ダンス仲間たちもそれぞれ家庭を持つなど、以前とはだいぶ状況が変わっていて。ダンススクールの帰りに少しお茶の時間を取ることさえも、いつの間にか難しいことになっていきました。気持ちを切り替えようと、新しい習い事に通ってみたこともありましたが、そこでは誰かと意気投合することもなく、あまり長続きはしませんでしたね。それと同時に、若い頃にあった未来への希望や先のわからないワクワクも、歳を重ねるごとに感じづらくなり、徐々に閉ざされていくような感覚になっていって。「全てが予定調和になっている日常を打破したい」という気持ちが芽生え始めました。

仕事を通して仲良くなった友人から「富士吉田が面白そうだ」と聞いたのも、ちょうどその頃です。モヤモヤとした気分から抜け出すためにも良い機会だと思い、友人と2、3日お試し移住をしてみることになりました。その時は民泊サービスのAirbnb(エアビーアンドビー)に泊まり、日中は市内を散策したり、ドットワークPlusでのリモートワークも体験しましたね。

写真中央がダンスに打ち込んでいた頃の齊藤さん(提供写真)

お試し移住をする中で、たまたま入った小さな書店で店員さんが気軽に声をかけてきてくれて会話が弾んだり、カフェで居合わせた知らない人同士が会話をする姿を見かけたり、小さなことですが「なんかいいな」と感じる瞬間が多かったように思います。たまたま入ったラーメン屋の餃子も美味しかった(笑)。些細なことではあるけれど、美味しいご飯屋さんが身近にあるって嬉しいんです。それから富士吉田には何度か足を運び、ちょうど良い物件に巡り合ったタイミングで引っ越しを決めました。その時も、不動産屋の方がものすごく親切かつ丁寧な対応をしてくださって感動したんですよね。そういう一つひとつの出来事が、移住を後押ししてくれたのだと思います。移住に対しては「とりあえずやってみて、それでだめなら戻ればいい」くらいの気軽な気持ちもありました。

不安はまったくありませんでしたか?

2年ほど前から度々訪れていたこともあり、それほど不安な気持ちはなかったです。強いて言うと、冬の寒さと食事面でしょうか。東京にいた頃から外食することが多かったのですが、「地方は夜遅くまで営業している店が少ないのでは」という心配はありました。でも実際に来てみたら、飲食店もたくさんありますし、西裏というディープな飲み屋街もあるので、たとえ仕事が遅くまでかかっても入れる店があるとわかり安心しました。何度か来ることでそういった小さな不安も消えていき、「楽しいかも」という前向きな気持ちに変わっていったのだと思います。

 

富士吉田での新生活で感じた心の変化とは

実際に移住されてみていかがですか?

お試し移住をした時にも感じたように、人とのちょっとした交流が生まれやすい町だなという印象はあります。通い始めたヨガ教室やダンススクールでもそうですし、ドットワークPlusでも居合わせた方と会話が弾みます。そうやって少しずつ新しい人間関係を築いている最中で、とても充実感がありますね。ドットワークには登山部というものがあり、近々皆さんと山登りを予定しています。この町の人は、行く先々でフランクに話しかけてくれるし、オープンマインドの方がとても多いと感じますね。おかげで僕も自分から心を開けるようになりつつあります。

東京にいた頃は、カフェに入っても店員さんとは必要最低限の会話で終わるのが当たり前でした。相手も仕事ですし、こちらも大勢いる客の中の一人という感じで。それが今では東京のカフェに入っても富士吉田のノリで自分からプラスアルファの会話を楽しめるようになり、随分変わったなと自分自身の変化に驚いています。人と人の心が通ったコミュニケーションができるようになったことがとても嬉しいんですよね。ちょっと人間らしくなれたような気がして。

齊藤さんが通う富士吉田市内のダンススタジオ『KDC』(提供写真)

仕事はフリーランスのエンジニアなので、基本的には場所を問わずどこででもできます。打ち合わせや会議があるときは声を出すので自宅が一番気兼ねなくできますが、やはりそれだけだと気が滅入ってしまうタイプなので、市内のコワーキングスペースやドットワークPlusを活用させてもらうこともありますね。一人でパソコンに向かっている時間がどうしても長くなるので、そうやって意識的にリフレッシュするようにしています。今までは、スケジュールに余白があるとつい埋めたくなり、結果として詰め込みすぎてしまうという癖があったのですが、移住してからはそれがだいぶ減りました。プライベートが充実していることと、この町のゆったりとした雰囲気に影響を受けているのだと思います。最近は、詰め込んでいた仕事も少しセーブしてみてもいいかなと考えるようになりました。

リモートワークでの心がけはありますか?

僕はフリーランスのエンジニアなので側からみたら一人だけど、プロジェクトは6~7人のチームで動いています。普段はオンライン上でやり取りをしているメンバーですが、たまにリアルで会うことは大事にしていますね。お世話になっている会社の合宿や食事会にもできるだけ参加して、積極的に対面で話す機会を作るようにしています。普段からチャットだけに頼らずたまに声を聞くことが必要だと思っているので、適度にオンラインミーティングもします。対面や声でのコミュニケーションを大切にすることで、チームでの働きやすさが全く違いますし、仲が深まるとチャットの文字からもニュアンスが汲み取れるような気がしていますね。僕は、少しでも楽しく気持ちよく働ける方がいいので。

こう思えるようになったのは、最初の会社員時代の経験が大きいかもしれません。その頃は、仕事上の利害関係などが本当に苦しかったし、人と話すことも苦手でした。それもあってフリーランスになったのですが、今度は反対に誰とも話さないでいることの辛さを実感して。実際に経験することで、人と繋がることやコミュニケーションをとることの重要性に初めて気がつきました。トライアンドエラーを繰り返しながら自分にとっての働きやすさを模索し、今の程よいバランスに至っています。

ドットワークPlusでは開放感のあるオープンスペースが定位置だという

齊藤さんが富士吉田に感じた「心地いい」の正体とは

 

齊藤さんが思う富士吉田のアピールポイントを教えてください

店員さん同士がお客さんの前で普通に話しているとか、閉店時間になったらたとえ問い合わせが来ても店を閉めるとか、無理をしない自然体な姿をこの町ではよく見かけます。日本、特に都心だと、客と店の線引きがきっちりあることがスタンダードだと思うのですが、富士吉田は、そういう店が少なくて「海外みたいだな」と感じましたね。仕事が全てではない、ゆったりとした空気感が僕としては心地良いんです。

あとは、暮らしやすさでしょうか。大手の家電量販店やアパレルメーカーなどが一通り揃っているので買い物面ではひとつも不自由しませんし、それでいて地方の大らかさや雄大な自然も間近にある。そのバランスが、東京圏からきた移住初心者の僕としてはちょうど良い気がしています。それに、同じように都心から移住してきた人も多いので、移住者が新たな移住者を受け入れてくれていると感じる場面も多いです。そこで共感が生まれるのはいいなと思いますね。

ドットワークプロジェクトに期待されることはありますか

長年リモートで仕事をしていることもあり、東京にいた頃からいろいろなコワーキングスペースに足を運んでいましたが、そのほとんどが無人でした。それでも全く困ることはないですし、経済的にも合理性があると思います。でも、今思うと寂しいことですね。カードキーで入って、仕事が終わったら出ていくだけで、その間誰とも交わらない。けれど、ドットワークPlusは必ずスタッフの方が受付で迎えてくれて、そのことが僕としては有難いことだといつも思っています。そこで言葉を交わしたり飴をくれたりするんですよね。そういうちょっとしたことが、場の空気を作っているように思うので、これからも人の温かさを感じられる場所であってほしいと願っています。

ドットワークPlusの受付でスタッフと談笑する齊藤さん

 

ここで時々開催されるランチ会やクリスマスパーティーなどのイベントは、僕も参加させてもらうことがあります。この間は居合わせた皆さんと簡単なフルーツポンチを作りました。こういうイベントがあると、コミュニケーションのハードルがぐんと下がりますよね。そこで美味しいお店を教えてもらったり、部活みたいなものに参加してみるなど、新しい人間関係をつくる良いきっかけになっています。とはいえ、それぞれ別々の仕事をする中での参加ですし、関係が濃すぎることもないので、心地の良いコミュニティだと僕は感じています。この先もゆるやかに繋がれる場であってほしいですね。

齊藤大介さんからのメッセージ

普段しないことをしてみたり、知らない場所に行ってみるのはそれだけでも楽しいです。日帰りでも良いですが、お試しで2、3日富士吉田に滞在してみると、新しい何かが見つかるかもしれません。リモートワークの方であれば、ドットワークPlusでの仕事を体験してみるのもおすすめです。特に、僕のように「なんとなく場所を変えてみたい」「ちょっと移住に興味がある」という人にとって富士吉田は、都会と地方が同居したちょうどいい町だと思います。東京圏からのアクセスも非常に良いので、まずは気軽な気持ちで足を運んでみてください。

 

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。

(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

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写真·記事執筆/高井まつり(KINONE