Uターン移住と同時に開院!地域の“駆け込み寺”を 目指す『たちかわ堂治療院』和光将志さん・利香さん

今年4月に上吉田に開院した『たちかわ堂治療院』。鍼治療のスペシャリストである院長の和光将志さんは、お父様の介護をきっかけに埼玉県から富士吉田にUターン移住し、これまでの鍼治療の技術と経験を活かして、一本鍼での治療を行なっています。一本鍼とはその名の通り、一本の鍼のみを使い直接痛みにアプローチする東洋医学。実は妻の利香さんも、辛い頭痛に悩んでいたときに一本鍼に救われたのだといいます。利香さんは治療院の広報面で将志さんをサポートしながら、移住前から続けている仕事をフルリモートワークに切り替えて継続中。治療院と自宅を兼ねた一軒家の一室で仕事をされています。また、将志さんのお父様が営んでいた魚屋の人気商品いかの塩辛20年ぶりに復活させようと奮闘している利香さん。移住とともに新たなチャレンジをするお二人に、その背景について伺いました。一本鍼の治療も実際に見せていただきました。

 

一本鍼のたちかわ堂治療院を開院するまで

インタビューに応じてくださった和光将志さんと和光利香さん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

今年の春に開院されたそうですね

将志さん:

東京を拠点に鍼治療一筋でやってきましたが、父の体調が悪くなり、介護のために富士吉田にUターンしました。会社勤めをしながら介護をするというのはなかなか難しい部分があるので、仕事と介護を両立するために自分で開業することにしたんです。一軒家を見つけて、今年の4月から5月にかけて段階的に引っ越しを行いました。

接骨院で働きたいと思うようになったきっかけは、高校時代に接骨院のお世話になることがあったからです。野球をやっていたので、自分も周りの仲間も体を壊すことが度々あり、その頃から接骨院は身近な存在でした。鍼治療も受けていたので、この道に入ったのは自然な流れでしたね。鍼治療を仕事にするには専門学校に入って資格を取る必要があったので、高校卒業と同時に上京することに。当時、富士吉田から一番近い専門学校が東京だったんです。そのまま東京の大手接骨院で働き、2004年から20年間は分院長を務めていました。

深部のコリに直接アプローチするという一本鍼

 

たちかわ堂治療院さんの鍼治療について教えてください

将志さん:

当院では一本鍼という治療を行なっています。メディアでよく見る一般的な鍼治療は1020本ほどの鍼を広範囲に一度に刺していくのですが、私のやり方はたった一本の鍼を刺しては抜くを繰り返し行うというものです。ご利用される方の年齢層は20代から60代と幅広く、スポーツをされている方から女性特有の不調を訴えてこられる方まで様々。肩こりや腰痛、頭痛、膝の痛みなど、病院に行っても改善しない症状に悩んで来られる方が非常に多いですね。今の医学でも原因がはっきりとわかって治療するということは案外少ないのではないでしょうか。症状を軽くするための薬は処方してもらえても、原因を追求して直すことは多くないかもしれません。それに対して鍼治療は根本的なところにアプローチして治療します。鍼治療に限らず東洋医学全般が内側から不調を治していくものだと言えますね。

利香さんも一本鍼治療を受けられていたそうですね

利香さん:

大学進学のために長野の田舎から東京へ出たのですが、慣れない一人暮らしや環境が原因でひどい頭痛に悩まされるようになっていたんです。それが鍼治療を受けるようになったきっかけでした。当時、市販薬を飲んでも病院に行っても治らず、薬を飲むのをやめればまた痛みが戻ってしまうという状況で。西洋医学ではどうにもならなかったので、じゃあ東洋医学はどうだろうって。選択肢が狭まっていく中で、まだやったことのない鍼治療を試してみることにしました。しばらくの間、頻回に通ううちに症状が改善されていったので、鍼治療は元気になるための大きなきっかけになったと思います。

今も姿勢の悪さから肩こりになることがあるので、時々夫に鍼治療をお願いしています。施術中から徐々に肩の辺りがポカポカしてきて、私の場合は即効性を感じられます。鍼を刺したときの痛みの感じ方は人それぞれのようですが、私はすっかり慣れてしまいましたね。開院した治療院では、ブログやSNS発信、チラシ作りなど、広報周りのサポートをできる範囲でやっていけたらと思っています。でもどんなことを発信したら良いのだろうかと悩んでしまって、発信することの難しさに直面しています。

爪楊枝よりもはるかに細い鍼を使って一回一回丁寧に刺していく

将志さん:

痛み以外の不調やお悩みでも一度来院していただければ、ご相談に乗ります。予防として定期的にきていただくこともできます。本当に辛い方や困っている方たちにとって駆け込み寺のような場所になっていけたらいいなって。

 

引っ越しを機に会社初のリモート社員に

 

利香さんは現在どのようなお仕事をされているのでしょうか

利香さん:

以前から勤めている通販サイトの運営などを行う会社で移住後も継続して働いています。ふるさと納税の支援なども行う会社で、たまたまですが山梨県を含む中部エリアを担当させてもらっています。引っ越しが決まった際に退職を申し出たのですが、「フルリモートで継続すればいいんじゃないか」というお話をいただきました。ありがたいことに今はリモート社員第一号として、富士吉田にいながら働くことができています。基本的には義父と暮らす自宅と治療院を兼ねたこの場所でリモートワークをしていますね。本社に行くのは半年に一度、総会があるタイミングで出社します。

治療院と自宅を兼ねた一軒家の一室で仕事をする利香さん

 

義父が作ったいかの塩辛の復活を夢見て

いかの塩辛を販売する計画があるそうですね

利香さん:

義父は20年ほど前まで月江寺駅近くの商店街で魚屋を営んでいました。徐々に商店街全体の活気がなくなっていき、魚屋も閉店してしまったそうです。再び魚屋をやることは叶わなくても、これまで頑張ってきたことを受け継いで何か形にできることがないか、と考えていました。それで美味しいと評判だったいかの塩辛がいいのではと思ったんです。

それに、引っ越してきてから気づいたのですが、ここの地域の人たちはお魚をよく食べるんです。そういう文化があるんだなって。個人商店が次々になくなっている時代なのに、魚屋さんだけは今でも市内に3軒ほど残っているんですよね。単なる魚屋さんとしての役割だけでなく、コミュニティとして大きな役割を果たしてきたように私は思います。もし商品化が実現したら、昔いかの塩辛を好きでいてくださった方にも食べていただきたいですし、途切れていた縁がまたそれを機に復活したらいいなという思いもあります。いかの塩辛の復活が義父の元気に繋がれば。

将志さん:

ご家庭用に魚を購入される方以外にも、商店街から徒歩圏内の飲食店の方々が来て、いつも購入してくださっていましたね。昔はそうやって地域で支え合っていたのだと思います。

魚屋さんがあった商店街の現在の様子

利香さん:

先日「ビジネスでコネをつくろう」というテーマの異業種交流会に参加して、いかの塩辛についてプレゼンをする機会があったのですが、居合わせた皆さんがいろいろなアイデアを出し合ってくださいました。仕入れやプロモーションの面で様々な意見をいただけたことが嬉しかったですね。ここからだと静岡県の沼津港が一番近い海なので、当時と同じ沼津港で仕入れられたら一番なのですが、今は日本で漁れるいかの量自体がかなり減ってきているという現実もあり、仕入れの段階で躓いてしまっている状態です。なんとか実現できたら、飲食店などでも提供していただけるようになったり、新しいファンができればいいなって思います。そういう私も一度も食べたことがないので(笑)。いつか味わえるように実現に向けて少しずつでも進んでいきたいです。

将志さん:

僕にとっていかの塩辛といえば父の味でした。スーパーで売られているものは塩分が多いけれど、父が作ったものは食べやすくて好きだったんです。僕が20代半ばのときに閉店してしまったので、もう何年も食べていないことになりますね。

 

将志さん・利香さんそれぞれから見た富士吉田

 

昔と比べ、富士吉田の街はどんなふうに変化しましたか?

将志さん:

30年ぶりに戻ってきたら、道も変わっているし、田んぼや畑だった場所にも家が立っていたり、まるで浦島太郎のような気持ちでした(笑)。一見すると新しいものが広がっていて栄えているようにも見えるのですが、人口は当時と比べてかなり減っているようです。魚屋があった商店街もほとんどの店がシャッターを下ろしてしまいました。便利なスーパーがいくつもできたことによって、小さな個人商店が残ることは厳しかったと思います。これから先、ますます活気が失われて衰退していくのかなっていう心配はありますよね。

子どもを産み育てやすい環境や、移住しやすい場所にすることで、今後人口が増えていけば良いのですが。どこの地域も同じような問題を抱えていると思うけれど、そういった人口が増えるような環境づくりが今一番大切かもしれませんね。

富士吉田のアピールポイントがあれば教えてください

利香さん:

これまで都内近郊で暮らしてきたのですが、富士吉田に引っ越したことで不便を感じるようなことは全くなく、リモートワークも快適にできています。富士山が間近で見られることもここの良さですよね。都内へのアクセスもしやすいので、特にリモートワーカーにはおすすめできる環境です。基本的には自宅で仕事をするのですが、時々カフェに行ったり、QスタのドットワークPlusを利用させてもらったこともあります。

人間関係も近すぎず遠すぎず、心地の良い距離感。地域性なのかは分かりませんが、私の周りにはさっぱりとした性格の人が多く、程よいバランスで関われている気がして過ごしやすいところだと感じています。

晴れた日は治療室の窓から富士山が望める(提供写真)

ドットワークプロジェクトに期待されることはありますか?

利香さん:

町にある企業や個人商店、賛同してくれたお店であればどこでもリモートワークができるのは面白い取り組みだなって思います。選択肢が増えることは、リモートで働いている人にとってはありがたいですよね。以前ドットワークPlusに伺った際、学生さんが利用されているのを見かけました。なんだかそれがすごく印象的で。図書館以外に勉強できる場があるのは魅力的ですし、今後もいろいろな方が幅広く出入りできる場所であってほしいですね。

和光ご夫妻からのメッセージ

利香さん:

リモートワークをする私としては、Wi-Fiなどの設備が整っている場所が多く働きやすい環境であることと、都心へのアクセスが便利なところが富士吉田の魅力だと感じています。それに加えて富士山が間近に見えて空気も綺麗で。日々自然に癒されるので、移住におすすめの環境です。リモートワーク仲間が増えたら嬉しいですね。

将志さん:

生活に必要なものは基本的になんでも揃っていて、何も不便がないのもこの町の良さですが、自然の中に入っていきやすい場所でもあります。山登りもしやすいところなので、自然の中で過ごすこともおすすめしたいですね。他にもレトロな飲食店が並ぶ西裏や、富士山が見える本町通りの商店街も人気スポットです。ぜひ一度、富士吉田にトリップしてみてください。

たちかわ堂治療院

https://tachikawado.com

 

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。

(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

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写真・記事執筆/高井まつり(KINONE