デザインの力で少しずつ“そっと”世界に変化を。
富士吉田を拠点に活動するデザイナー・水島宏美さん

富士吉田を拠点に活動するデザイナーの水島宏美さん。水島さんが豊かな自然を求めて選んだ移住先は、機織りが盛んな町でした。水島さんが大学在学中に立ち上げた事業『デザイン計画「そと」』では、山梨への移住をきっかけに、機織りの生地を活かしたプロダクトも製作されています。傘生地を用いたアクセサリーや、布の切れ端を編んだスマホストラップは、旅のお土産としても人気があります。他にも地域の人と共同でプロジェクトに取り組むなど、富士吉田をメインに活躍中。屋号の由来やプロダクトが生まれた背景からは、物事に対する水島さんならではのユニークな視点が感じられ、同時に人や物への愛情も垣間見えてきます。普段、ものづくりをする人や地域と関わる中で感じる富士吉田の魅力についてもたっぷりと伺っています。

心地良い場所を探し求めて辿り着いた富士吉田

インタビューに応じてくださったデザイン計画「そと」水島宏美さん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

現在の活動を教えてください

富士吉田を拠点に『デザイン計画「そと」』という屋号で事業をしています。美術大学に在学中の頃に始めたので15年ほど経つでしょうか。アートで町おこしをしている団体が埼玉県にあり、そこの皆さんと大学生の頃に仲良くなって3年くらい住んでいた時期があります。大学よりもそこのコミュニティにいる時間の方が長かったですね。他にもいくつかのコミュニティがあり、「こういうことがやってみたい」と私が言うと、いいねって応援してくれる人たちが周りにいる環境だったんです。おかげで、学外で出会ったアーティストやデザイナー、イベントを企画している方などから仕事をいただくようになり、現在に至ります。自分で何でもやってしまえるような、バイタリティのある人たちに囲まれていたせいか、私も企業などに就職する選択肢は思い浮かばず、自分で事業を始めたのはごく自然な流れだったように思います。

亡くなった祖母が以前住んでいた、山梨県都留市の家に引っ越したのがちょうどコロナ禍の2020年春です。今は拠点を富士吉田に移し、傘生地のハギレや捨て耳と呼ばれる裁断された布の端を活用したプロダクトを中心に、ジャンルを限定せず幅広くデザインに携わっています。個人の方からのオーダー品を製作したり、地域のイベントでこども向けワークショップを開催することも。普段は一人ですが、能登半島地震の復興プロジェクトに参加したり、デザイナーとしてプロジェクトチームに加えていただくなど、他の方と共同でものづくりをすることもあります。

移住先に山梨を選ばれた理由を教えてください

父は医師、母は看護師のため、都心と都留市にある病院兼自宅を昔から行き来していて、小さい頃はそれ以外の地域にも住んできました。転々とする中で、自然に囲まれた環境と都心での生活を両方経験し、自分が本当に心地良いと思えることや好きなことは自然の中で過ごすことなんだと大人になって気がついたんです。でも自然に触れられる地域って日本に沢山ありますよね。移住先をどこにしようかと、いろんな地域に足を運んだり、考えているうちにコロナ禍に突入してしまって。家族のアドバイスもあり、ひとまず祖母が住んでいた都留市の家で一人暮らしを始めたのが移住のきっかけでした。

今は本町通り商店街のすぐ側にある、元々ニット工場だった建物の一角にアトリエを構えています。ちょうどアトリエを探していたときに、ひょんなことがきっかけでこの場所を紹介してもらうことができました。機織りが盛んな富士吉田の生地を使ったプロダクトを製作することが多く、仕事の関係者も材料を購入するお店もすべてこの周辺なんですね。それで半年ほど前に拠点を都留市から富士吉田市に移しました。マンションの空きが見つかるまでの間『ふじよしだ定住促進センター』を通して一時的に借りた部屋に住んでいるのですが、最近やっと空きが出たということで、引っ越し準備の真っ最中です。

アトリエ前には都留市の家から持ち出した古家具や荷物が

また、都留市にいた頃はご近所付き合いもなく、近くに一人も知り合いがいない状態でかなり孤独感があったのですが、今のアトリエには他の会社のオフィスも入っているので、挨拶を交わしたり、いつも人の気配を感じていられます。それだけでもずいぶんと気持ちが救われますね。

 

みんなの視点が少しずつそっと変わるデザインを

デザイン計画「そと」の由来を教えてください

「そと」はそっとという言葉からきています。デザインは問題解決のためにあるとよく言われるのですが、一度に何かが変わるのではなく、そっと少しずつ、気が付いたら人の考え方や物事を見る視点が変わっているようなことがデザインの力でできたらいいなと思い、この名前を付けました。それに、端っこにいて目立たないけどそっとそこにあるものが好きで、バーン!と目立つことをするよりも自分に合っている気がしているんです。

思い返せば昔からそんな視点で物事を見ていた気がします。バラやユリのような華やかなものより、すぐ側にある野草に目が行っていました。すごく綺麗に沢山咲いていても誰も見向きもしない。そういうところにスポットライトが当たる時代があってもいいのかなって。今はスターじゃなくて影になっているけど、影の良いところにみんなの目が向いて、そうしたらちょっとずついろんなことが変わっていくんじゃないかと思っています。その影にあったものがスターになったら、また別のこぼれ落ちるものが出てきて私はそっちに興味を持って。その繰り返しになるのかもしれませんね。

以前はグラフィックデザインもされていたようですね

どうしてもプロダクトを作るとなると、材料費などお金がかかりますよね。起業したての頃は学生でお金がなかったこともあり、需要のあるグラフィックデザインもやっていました。グラフィックデザインは、名刺やフライヤー、DMなどですね。でも、そればかりをやっているうちにどんどん辛くなり、いつの間にか楽しくないなって思うようになって。一度立ち止まって考えたら初めはプロダクトが作りたかったんだと自分の気持ちに気がつきました。お休み期間を経て、今はやりたいことに注力できています。

自らデザインした『デザイン計画「そと」』のロゴ

 

こぼれたハギレ捨て耳に光を当てたい

ハギレなどの生地を使ってものづくりをされているのですね

富士吉田は地域柄、機屋さんがとても多く、布のハギレや捨て耳が売られていることがあるんです。工場見学や生地を購入させてもらう際に出会うことが多いですね。スマホを肩から下げられるストラップは、捨て耳を編んで作っています。細長い形状を活かしたかったのと、ちょうどスマホストラップがあったら便利だろうなと気になっていた時期が重なって商品化しました。

素材や色の組み合わせによって印象が変わるストラップ

私はどうしても真ん中にある強いものよりも、端にそっとあるものが気になってしまうんです。傘生地のハギレを使ったアクセサリーもそうですね。傘生地として同じ工程で作られたのに、傘として使われるところと、切り落とされるものに分かれてしまう。モノを作るときには必ず捨てられる部分って出るものですよね。同じ素材、同じ工程で織られているのに、分かれ道でこぼれてしまう。だけど、傘にならなかったとしても、また別の形で人に求められたり、綺麗って言ってもらえたら、少しは浮かばれるんじゃないかなって思って。逆にそれも面白い人生かなと。そういう人生を送ってくれたらすごくいいなっていう気持ちが強いのかもしれません。私はモノを人のように見ちゃうところがありますね(笑)。

お土産として宿泊施設をメインに販売中

他には、一度役目を終えたガラス瓶が第二の人生を歩めるようにと少しだけ手を加えた『Second life』というガラス製品のシリーズも作っています。すべて溶かしてリサイクルされるガラスとは違い、元の姿や記憶、傷など、個性を残したまま、唯一無二の姿になるよう、山梨のガラス職人さんにご協力いただいています。今後、展示会などで実物を手に取っていただける機会を作っていけたらと考え中です。

富士吉田の空気をつくる自然環境とものづくり

富士吉田のアピールポイントがあれば教えてください

富士吉田は若いクリエイターたちが多く集まる地域です。行政もそこに目を向けていて、一緒に盛り上げていこうする空気が強い地域だと感じます。他の地域にはない一番の魅力はそこにあるかなと思いますね。外からきた地域おこし協力隊の方や移住者を中心にこの十数年でやってきた成果が今出始めているようです。これまでは、機織りの文化があっても、服の裏地やOEMといった形で、表には出ない布の産地というイメージがありましたが、地域の皆さんが少しずつ蒔いた種が発芽して、勢いや活気が肌で感じられます。

盛り上げに関わられている方々も、すごく素敵な方ばかり。ベタベタするような人間関係はないけれど、でもどこかでみんな繋がっていて、本当に助けが必要なときには手を差し伸べてくれる空気感がありますね。そういう人間的な魅力や温かさのある人たちが集まっている気がします。それにアートに対しても皆さん愛があるんですよね。そういう方たちの近くに居させてもらえるだけで、安心感と刺激があり、私にとってはとても居心地が良いんです。停滞せず常に風が通っているようなイメージ。アトリエのすぐ横が富士山が見える本町通り商店街ですが、まさにあそこからふわ~っといい空気が流れてくる感じと同じです。私にとって富士吉田の魅力は、そんな空気感だと思います。

休日はいつもどのように過ごされていますか?

休日は基本的に河口湖か山中湖で、ぼーっと本を読んだり散歩をしたり、コーヒーを飲んでいます。私はその時間がないと生きていけないので(笑)。富士吉田の周辺は自然が多いので、周りを気にせずゆっくり過ごせる場所があり、気に入っています。富士山の力を毎日身近に感じられるのも、ここの地域ならではですね。

河口湖の畔にある八木崎公園もお気に入りだという

ドットワークプロジェクトに期待されることはありますか?

先日、ドットワークPlusでのイベントに少し顔を出させてもらいましたが、交流の場としても貴重だなと感じます。いろんな人に会うことで刺激をもらったり、助け合いも生まれるかも知れないので。そんな交流がこれからも広がっていくと嬉しいです。それから、街中のいろんなところにワーケーションできる場所があるのも面白いですね。「こんなところにも!」と思うような意外な場所にあったりして。

水島宏美さんからのメッセージ

出来上がっているコミュニティに入っていくという部分でいうと、移住って大変だと思われる方も多いかもしれません。でも優しい方も多く、受け入れ体制もあるし、移住しやすい地域だと思います。自分からアクションを起こせば割と交流の場はあるので。『ふじよしだ定住促進センター』では、移住者同士の交流の場としてごはん会を開いてくれていますし、アンテナを張っていたり行動すればどんどん繋がりを作れる地域だと私は感じます。県外から遊びに来る友人からも「いいところだね」と言ってもらえたり、「住みたい」と言う人もいるので。まずは気軽に来てみてほしいですね。一度来たら、人や自然の良い空気を感じられると思います。

 

デザイン計画「そと」
https://www.designproject-soto.com

 

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。

(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

富士吉田市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」
「今こんな活動をして街を盛り上げている」
「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」
「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークPlusにいらしてください!

写真・記事執筆/高井まつり(KINONE