さまざまな地域コミュニティでの経験を活かして
人や企業を繋ぐキャップクラウド・上田和弥さん

大阪出身の上田和弥さんは、地元企業での営業職を経て、好きだったアウトドア業界に飛び込みました。静岡県下田市でキャンププランナーとして地域に根ざした活動を行った後、新たな挑戦を求めて富士吉田へ移住。2024年夏よりキャップクラウド株式会社の社員として「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」事業に取り組み、地域と企業のハブ役を担っています。人との繋がりを大切にする上田さんの姿勢、副業として続けてきた写真への想いからは、まちづくりに対する新しい風が感じられます。持ち前の明るさと好奇心で自ら積極的に地域に入り込む上田さんに、内と外を繋ぐ役割としての心がけなどを伺いました。

キャンププランナー経験を通して学んだコミュニティづくり

インタビューに応じてくださった上田和弥さん

本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくお願いします。

以前はどんな仕事をされていたのでしょうか?

僕は大阪出身で、大学卒業後は地元の企業に営業職として就職しました。教育費など、両親にはかなり支援してもらっていたので、大手企業に入ることで、まずは家族に安心してもらいたいという気持ちもありました。でも実際に働いてみたら、システム化された業務の繰り返し。10年後、20年後もきっとこうなんだろうなと未来が見えたときに、本当に自分のやりたいことって何だろうと考えるようになって。好奇心旺盛な性格もあり、ルーティーン化された毎日に疑問を持つようになりました。他にもいろいろな理由が重なり、就職から1年後に退職しました。

その後、数ヶ月の模索期間を経てアウトドアの会社に入り、静岡県下田市に移住しました。自分の好きなことは、大学時代から続けてきたキャンプとカメラです。カメラは大学生の頃、仲間と旅行をする機会があり、そのときカメラ担当になりました。せっかくならちゃんとやりたいと思ってカメラを買って、撮影した写真が思いの外みんなに喜んでもらえた。それがきっかけで興味を持ち、今も副業としてカメラマンを続けています。キャンプは大学時代に入っていた野外活動部というサークル活動をする中でハマっていきました。地域のこどもたちと月に一度遊んで、こどもの心身の成長に寄与するのが活動の目的です。夏には2泊3日のキャンプ、冬にはスキーをしたり。企画設計から保護者とのやりとりまで、様々な管理をしていたのですが、それを機にキャンプに魅了されていきました。

富士山の麓の絶景キャンプ場にて(提供写真)

好きなことを軸に考えたときにキャンプ場で働くのはどうだろうと思い立ち、いろいろと調べていたら、前職の会社の言葉に目が留まりました。それが「何もないけど何でもある」という会社のモットーです。一般的なキャンプ場とは一味違い、1日1組限定の船で行くキャンプ場を運営していると知り、面白そうだなと惹かれてすぐに応募。そうして働くことが決まって下田に移住しました。

どのような業務を担当されていたのでしょうか?

その会社では、キャンププランナーという呼び方をしていたのですが、数ヶ月前から予約が入り、お客様が何をしたいか、最終的にはどういった形で終わりたいかなど、幹事さんの意向をプランニングして提供するということをメインにやっていました。ウエディングプランナーのようなイメージですね。お客様は、企業さんやお友達同士、複数の家族など、団体の方が多いです。

最初、キャンプ場は2拠点のみだったのですが、僕が所属していた2年間で、福岡や鹿児島、群馬など、全国に拠点が広がっていきました。その立ち上げで、同年代のメンバーが様々な拠点に散らばったのですが、メンバーに会いに行ったり、カメラマンとして呼んでもらうなど、みんなで作業をする機会も多く、各地域と深く関わることにも繋がりました。立ち上げの際、まずは地域住民の方々に来たいと思ってもらえるキャンプ場をつくろうという意識から、地域コミュニティに積極的に入り込んだり、自分たちで新たなコミュニティを作るなど、コミュニティ形成の活動には注力していましたね。

下田の美しい浜辺を歩く上田さん(提供写真)

新天地・富士吉田で新たなチャレンジへ

その後どういった経緯でキャップクラウドに転職されたのですか?

一旦下田を離れようと思ったのが始まりでした。というのも、自分が努力を怠っていたとしても、有難いことに依頼が来たり、困ったときは助けてもらえる、とても恵まれた環境で。このままだとたぶん怠けちゃうだろうし、この先成長しないだろうなと思ったんです。もっと自分自身を高めたい、もっと全国で仕事をしたいという気持ちもあったので、アウトドアの会社を辞めて移住することに決めました。下田を出てからも、地域の人たちとの関係は続いていて、「いつか大きくなって恩返しをしたい」と本当の故郷のように思っています。

キャンプ場によく遊びに来ていた方にご縁を繋いでいただき、20247月にキャップクラウド株式会社に入社しました。僕は元々地域の人たちと関わるのが大好きで、ちょうど会社としても地域に入り込める人材を探していた。タイミングにも恵まれて転職することができました。富士吉田の地名すら知らなかった僕ですが、初めて訪れたとき、町の空気感がよく、富士山も間近に見えて最高だなって。さらにここに住む人の温かさや、インバウンドの盛り上がりなども知り、この町に関われたら面白そうだと心が動きました。

キャップクラウドでは何を担当されているのでしょうか?

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス事業」の担当です。市内をまるごとサテライトオフィス化するというのが大きな括りでの活動になるのですが、中でも僕が注力しているのがビジネスマッチングです。県外の企業がこの町に来て、地域の方や事業者さんたちと何かしらの連携ができるよう、繋ぎになるのが僕の役目だと思っています。最終的には、富士吉田にサテライトオフィスをつくってもらい、その結果として関係人口、移住人口が増加する。それがこの事業の目的です。

入社して数ヶ月が経ちましたが、これまでとは違って行政とのやりとりもあり、その中で学ぶことも沢山あります。民間企業同士の場合は多くがお互いの利益を考えて動くことを重視されますよね。でも、行政の場合は、町のこと、地域住民全体のことを考えて動く必要があります。その点は、今まで重きを置いてこなかった視点ですし、こうした方が面白いだけでは通用しないので、新たな経験ができていますね。

リモート環境が整うドットワークPlus Labにて

あとは、まったく初めての地域なので、地名や歴史、どんな人が住んでいるかを知るためにも、地域に入り込んで掘り下げることをこの数ヶ月間、心がけてきました。今は次のステップとして、ちゃんと信頼を得ることにフォーカスしています。まずは個人として信頼関係を築いて、それが最終的には会社の信頼にも繋がるよう動いていければと思っています。

コミュニケーションの中で意識されていることはありますか?

「○○さん、お疲れさまです!」など、できるだけ名前を呼ぶようにしています。ちょっとしたことですが、それだけで距離が縮まる気がしますし、相手にも覚えてもらいやすい。それから、まずは仕事の話よりもできるだけプライベートの話をするように心がけています。そのほうが、相手の本質が見えるように思います。なので、僕も素の自分を見せて、肩書きではなく人間として信頼してもらえるようになりたいですね。写真の仕事では人物の撮影がほとんどなのですが、そこでもやっぱり自然体が好きっていうのは共通していて。怒っていても笑っていても無表情でもいい、その時の感情や本当の姿が伝わる写真を届けていきたいという想いで活動しています。

 

富士吉田の内と外をつなぐハブを目指して

上田さんが思う富士吉田の魅力を教えてください

やりたいことに挑戦できるというのがこの町の大きな魅力ではないでしょうか。移住者に対する行政の支援や、新規事業を起こす際にも商工会議所など、サポート・応援の環境があります。そういった体制は他の地域に比べて整っていますね。もう一つの魅力として、多くの人が携わることができる町というのはポイントだと思います。今はリモートワークも浸透して、わざわざ現場に行かなくてもできることはあります。でも、富士吉田は都市部からのアクセスがよく、気軽に訪れることが可能。実際に会って集える場所であり、環境、歴史、文化、地場産業、あらゆることが一箇所に集まっていて、ハブとしての要素が揃っています。これは他の地域では感じなかった大きな魅力。今後、ハブの役割を担えるような場所をさらにつくっていきたいですね。

仕事以外ではどんな過ごし方をされているのでしょうか?

休日はだいたい町歩きをしています。車を持っていないということもあるのですが、歩いて町を知ったり、地域の方と立ち話をしたり。やっぱりそういうことが好きなんですよね。道で挨拶を交わしただけのはずが、初めましての方と1時間くらい喋っていたなんてこともありました(笑)。

先日歩いていたら、ドラマのロケ地となった喫茶店を目掛けて県外から来たという方に会いました。喫茶店の場所を案内し、「他にもこんなところに行ってみたら面白いかもしれませんよ」って織物生地のお店を紹介したのですが、そのあともまたばったり会って、「紹介してもらったお店、すごく良かったです」って喜んでもらえて。そんなふうに誰かと誰かを繋ぐような動きをこれからもしていたいなって思います。

西裏通りで開業準備をする田川ご夫妻とも立ち話

今後、まるサテ事業でやっていきたいことは?

最終的に外と中の人を繋ぐためにも、コミュニティづくりは必要だと思っています。面白い人たちがいるってことをちゃんと伝える場や、地域の人たちと交流・連携できる場づくりは今後も継続して取り組んでいきたい部分ですね。観光に来た方にも、ただレトロな商店街で富士山を撮影するだけでなく「こんな人がいて、こんなことをやっている」といった町案内も含めて伝えていけるように、コミュニティ形成をしていきたいです。

もう一つは、ここに住むこどもたちや学生さんがもっといろんなことを経験できる機会をつくりたい。進学や就職を機に県外に出る人も多く、それも良いことだと思います。でも、帰って来たくなる町を用意してあげたいなって。まだこの町にいるうちに、どんな仕事があって、どんなスキルが学べるか、見て感じてもらうことはできますよね。それを知った上で、県外に出るのもいいですし、その後の選択の幅も広がるのではないでしょうか。たとえ県外で就職したとしても、地元の企業と関わるなど、違った繋がりが生まれるかもしれません。

コミュニティ形成や人材育成以外で言うと、ドットワークプロジェクトをもっと町に浸透させていけたらいいなとは思っています。ドットワークプロジェクトは、まるサテ以外にも飲食業や宿泊業もやっていて、一見バラバラに見えるものも、点と点が繋がることで全体に広がっていく気がしています。自ら繋がって、繋げて、そんなふうにプロジェクトとして進めていけるといいです。

 

上田和弥さんからのメッセージ

地元の人、移住者、クリエイター、インバウンドなど、本当に多様な人がいて面白い町です。何かを作り出したいとか、自分で事業を起こしたい人にはすごくいい町。『ふじよしだ定住促進センター』では、移住の体験も行なっています。まずは体験してみると、何か一つでも響くものがあるかもしれません。僕もまだ移住して日が浅いですが、1年後、2年後にはこの町を案内できるようになっていられたらいいなって。ぜひ一度遊びに来てみてください。

 

インスタグラム(個人アカウント)
https://www.instagram.com/kazuya_photopo

 

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス」とは

「富士吉田市まるごとサテライトオフィス(略:まるサテ)」は山梨県富士吉田市全体を使って、様々な事業者が富士吉田市内に自分のサテライトオフィス(企業または団体の本拠地点から離れた場所に設置されたオフィス)を手軽に持つことができる取り組みです。
(詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000093585.html

富士吉田市まるごとサテライトオフィスでは取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」
「今こんな活動をして街を盛り上げている」
「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」
「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

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写真・記事執筆/高井まつり(KINONE