新しい市民をリクルート!?富士吉田市役所の移住定住プロデュース

今回のインタビューに答えてくださった富士吉田市役所の企画部の皆さん

眼前にひろがる大迫力の富士山、夏でも過ごしやすい爽やかな高原の気候。東京からもほど近い山梨県の富士吉田市は、古くから富士山信仰と織物の町として有名な、富士山の裾野に広がる高原都市です。県内外から観光やワーケーションを楽しむ旅行者も多く、中にはこの地に惚れ込んで定住を選ぶ、いわゆる移住者も増えてきています。しかし、いざその地域に住むとなれば、住まい、仕事、コミュニティなど現実的な問題とも向き合わなければなりません。今回は、そんな富士吉田市への移住者をサポートしている富士吉田市役所の企画部 地域振興・移住定住課にインタビュー。同課のお仕事や富士吉田市の魅力、富士吉田市のワーケーションの未来像などをお聞きしました!

▼新市民の方いらっしゃい!地域振興・移住定住課のお仕事とは?

インタビューに答えてくださった地域振興・移住定住課の羽田昌訓さん
本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくおねがいします

さっそくですが地域振興・移住定住課とはどのような部署なのですか?

現在、全国の地方都市が首都圏への若年層の流出や少子高齢化といった定住人口の減少による問題に頭を悩ませています。残念ながら富士吉田市もそのうちのひとつです。そこでわたしたち、地域振興・移住定住課は、富士吉田市の人口減少に歯止めをかけるべく、体験・教育を通じて地域の魅力を伝えることで、外から移住者だけでなく、将来的に地域の若者に富士吉田市へ戻ってきてもらいやすくなるような施策を行っています。移住・定住がすぐに経済活性等に繋がるわけではありませんが、長期的に地域の活力を維持する大切な取り組みなので、長い目で地域、そして移住・定住される方にとって満足のいくものになるよう頑張っています。

富士吉田市に興味をもっていただく取り組みというのはどんなものですか?

富士吉田市の特色である織物などの産業や恵まれた自然など、色んな所に共感いただく中で、そこに関わる地元のキーパーソンと繋がるようなイベントやサポートなどを行っています。そこで富士吉田市の良いところ・悪いところなど、ご自身で感じるだけではなく、富士吉田市に暮らす人の意見も参考にしていただいたうえで深く納得してもらい、移住・定住へつなげていくというイメージです。

今、そういった業務をワンストップで担当してもらっているのが「定住促進センター」です。定住促進センターは、平成19年に慶應義塾大学と富士吉田市、山梨県が連携した官学連携がベースになっており、当初は学生のスタディーツアーや実証実験的な位置づけでした。それが徐々に発展していき、平成27年には「みんなの貯金財団」にバージョンアップ。現在では「一般財団法人 定住促進センター」となりました。そして、その中には地域おこし協力隊という、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援を行うメンバーも含まれており、富士吉田市の街を大いに盛り上げてくれています。

進めている取り組みで特に大切にされていることはなんですか?
快晴の下の金鳥居と富士山

3つの取り組みを大切にしています。まず1つ目は、地域住民の郷土愛の醸成や中心市街地の活性化をテーマにした取り組みです。富士吉田市の魅力を地域のその内外に発信するとともに地域の活力を維持する役割を担っている非常に重要な取り組みです。特に近年ではハタフェスに見るような、県外からも注目されるイベントも増えてきており、移住・定住といった単一の観点だけでなく、街づくりや観光業の観点から見ても大切な取組みの一つだと考えています。

2つ目は、住まいなどのハード面だけではなく、移住に関する情報提供や相談窓口の設置、奨励金や支援制度など、移住希望者の不安を払拭するようなソフト面でのサポートを行う取り組みです。移住希望者のニーズや悩みは、千差万別であることはもちろんですが、同一人物でも移住する過程で問題の優先順位や性質が変わることがあります。これは、いざ移住が現実的になると浮上してくる問題や逆に想定していた問題が大きなものではないという認識に変わることがあるためです。そのため、移住希望者それぞれによくヒアリングして、意に沿ったアドバイスやサポートにつなげることが大切だと考えています。

3つ目は、定住促進センターの例に見るように、官学連携です。地元では気づきにくい富士吉田市の資産や魅力の再発見、大学等からのアドバイス、人脈といったリソースは、地域を継続的に盛り上げていくために必要不可欠です。また、他の行政がどんな取り組みを行い、それに対してどのような成果が上がったのかに関して、大学ならではの深い知見が得られることも、取り組みの大きな意義の一つだと考えています。

いずれにしても行政として取組みの一つ一つにできる限り心配りをしながら、人と人との繋がりを重視しています。

▼移住定住を考えるときに大切なこと

インタビューに答えてくださった地域振興・移住定住課の萱沼妙子さん
移住を検討中の方に焦点を当てた取り組みはありますか?

いくら富士吉田市のことを気に入っていただけても、やはりいきなり移住ということはお奨めできません。そこで、2019年の8月からは、富士吉田市での暮らしを体験するための滞在施設として、FUJIHIMURO NERUTOCO棟を運用しております。ここは、長期滞在することで少しずつ街に馴染んでいったり、富士吉田市の住まいを探したりといった、新しい移住希望者や2拠点移住者が創造的に地域と関わることを目的に設置された施設です。稼働して2年程ですが、ある程度の期間を富士吉田で過ごすことで、多くの気付きやつながりも得られるとお声をいただいております。そのため「移住をしてみたい」と「実際の移住」の間にグラデーションを設けることができているのだと思います。

移住を検討中の方にはどんな不安が多いでしょうか? 

色々な価値観のある世の中ですが、やはり都心や都会に比べると、どうしてもローカルな部分ではカルチャーショックがあるようです。例えば、都心と比較して厳しい冬への準備や地元のコミュニティーとの付き合い方については、ご相談も多いです。せっかく富士吉田市とご縁をいただいた方々なので、継続して住んでいただけるように、それぞれをフォローアップする丁寧な付き合いを大切にしています。

富士吉田市の夏の風物詩である火祭りの様子
地域振興・移住定住課だからこそ気づく地域の魅力はありますか?

企業様をはじめ、色々な方面からお問い合わせをいただきますが、近年特に多いのは2拠点事務所の設置など、このコロナ禍で普及しているサテライトオフィスに関するものですね。地元の人間であれば、朝は窓を開けてそこに富士山があるというのは当たり前のことですが、その絶景に感動して、サテライトオフィスの候補に上げていただいている方は少なくありません。他にも空気が綺麗、水も美味しい、夏場涼しいといったことは住んでいると忘れてしまいがちな恩恵ですが、外の方から見るとそれが大きな価値であるということを再認識します。

特に水に関しては、ミネラルウォーターが水道から出るようなものなので、コメントとしていただく回数も多いように思います。中には「街の中で水の音を聞くことができる」というものもありました。単純に富士山が好きで富士吉田へ来るんだろうなと思ってしまいがちですが、実際に業務を進める中で富士吉田市の新たな魅力に気づかせていただいております。

▼富士吉田がもし、まるごとサテライトオフィスになったら…こんなことが起こる!と期待していること

世界的な絶景地として知られる朝倉山浅間公園からの富士山と忠霊塔
ドットワークBARに参加されたとき、どんなことを感じましたか?

フリーランスや企業の方々が意見や情報を気軽に交換することで横のつながりを作っていける、富士吉田市にこれまでになかった交流の場だと思いました。そのつながりが強化されていけば、わざわざ東京に仕事を発注せずとも、地元で大きな仕事を完結させられるようになるのではと期待しています。行政のお金は市民の皆さんからいただいている大切なものなので、それを東京や他の地域の業者に流すのではなく、この地域で還流させることができるようになるのは、強い地域経済の構築のために非常に重要なプロセスだと考えています。

また、フリーランスの方々はアンテナが立っている方も多く、今の富士吉田市にはないものの見方やアイディアが生まれる可能性があることも魅力です。経済効果などの数値ですぐにわかるものではありませんが、ドットワーク富士吉田店やドットワークBARは、プライスレスな人と人との繋がりが生まれる場所だと感じました。

もし富士吉田がまるごとサテライトオフィスになったら、何が起こると思いますか?

地元の方と移住者の方の感覚の違いの一つに移動手段があります。都会だと一駅、二駅は平気で歩いたりしますが、地元人なら近くのコンビニにも車で移動するという感覚があるのではないでしょうか。そのため場所によって歩いているだけで「ひょっとして市外の方なのかな?」と感じることがあります。もし、富士吉田がまるごとサテライトオフィスになったら、移住やワーケーションによって、きっと町中を歩いている人たちも増えることでしょう。それも地域の変化を感じ取れるサインの一つではないかと思います。

そうなれば地域経済の活性化はもちろんのこと、「これだけ市外の人が来てくれるんだから富士吉田はやっぱり魅力的な街なんだな」と地元の人が自分たちの住む街のことをもっと好きになってくれるのではないかと思います。

全国に1300あると言われる浅間大社の総本宮といわれる富士吉田市の富士山本宮浅間大社
地域振興・移住定住課さんからのメッセージ

まず富士吉田市内のどこからでも大迫力で富士山が見られることに感動してほしいです。次に当市のグルメであり、多くの名店が競い合っている吉田のうどんに舌鼓を打っていただく。また夜には西裏地区の新世界乾杯通りに出向いていただいて、西裏のハイボールを召し上がって下さい。そして次の日には浅間神社にお参りしてカラダとココロにパワーをたくさん充電、もちろん忠霊塔などの有名スポットも楽しんでいただきたいです。

このように、富士吉田市にお越しの方にはその魅力を大いに感じてもらいたいです。そして願わくば、将来的に同じ地域のメンバーとして街づくりを一緒にできるようになると、こんなに嬉しいことはありません。みなさん、ぜひ魅力満載の富士吉田市にお越しくださいね。

富士吉田市 企画部 地域振興・移住定住課

https://www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp/divinfolist/79

◯「富士吉田まるごとサテライトオフィス」構想とは

「富士吉田市内をまるごと使ってテレワークできる環境を整えよう」という構想です。

日本は新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの企業やオフィスワーカーに「在宅勤務」が推奨されて来ました。しかし、自宅で働くことに息苦しさ・やりづらさを抱えている人たちの存在は今や社会的な問題です。

そこで当社は山梨県の富士吉田をモデルタウンに「日常型ワーケーション」を提案しています。日常型ワーケーションとは、日中は通常勤務のようにしっかり仕事をして、仕事の前後の時間(朝・夕方〜夜)に地域の魅力に触れられるスタイルです。このスタイルは、作業環境の変化による生産性の向上のほか、地域の魅力に触れる機会の創出や、常に変化を感じる生活のなかで発想力・企画力などのクリエイティビティが培われるというメリットがあります。

富士吉田は新宿から1時間強と好立地ながら、富士山が目の前に広がる絶景地。当社は富士吉田でワーケーションができる仕組みづくりに取り組んでいます。まるごとサテライトオフィスの富士吉田をぜひ体験してください!

◯富士吉田まるごとサテライトオフィスで取材に応じてくださる方を集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」

「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークBARにいらしてください!


記事執筆/宮下 高明