空き家の利活用で地域コミュニティに新提案!シニアと若者による”共生のポテンシャル”が生まれる場づくり

今回のインタビューに答えてくださった地域おこし協力隊の上田潤(うえだ じゅん)さん

地方自治体から委嘱を受け、地域で生活しながら、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PRなどの地域活動を行う地域おこし協力隊。富士山の麓に広がるここ富士吉田市でも、頼もしいメンバーが日々、地域のために頑張っています。その中にあって、障がい者や高齢者、児童やひとり親などが感じやすい地域社会からの隔たりをなくそうと取り組んでいるメンバーがいます。自身を暮らしの壌造家と銘打ち、空き家の利活用で共生をテーマにしたコミュニティづくりに挑戦する「上田 潤」さんです。今回のインタビューでは、上田さんが解決したい社会的課題やその取り組みが目指すゴールについてお聞きしました!

you FUJIYOSHIDA

(富士吉田市の魅力を伝えるダイヤリーメディアでの上田さんの福祉コラム)

▼上田潤さんと富士吉田市が繋がるまで

共生のポテンシャルを探る舞台となる上田さんの事業所兼自宅
本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくおねがいします。

早速ですが、上田さんが富士吉田市に来られた経緯を教えてください。

僕はもともと南アルプス市の出身なのですが、大学から就職も東京で、ベンチャー企業を何社か経験しました。そんな中、遊休不動産を利活用する会社にいたとき、山中湖の施設マネジメントの担当となり地元山梨にUターン。企業の研修やアウトドアと絡めたアクティビティを提供するなど、団体宿泊をオーダーメイドでお手伝いするというような仕事をしていました。しかし、入社して半年も経たないうちにコロナが発生、閑散期である冬季ということもあり、客足がぱったりとなくなってしまいました。雇用調整助成金の関係で休業を余儀なくされて、じっくりと仕事や生活のことを考える時間が生まれたんです。そんなとき、〈かえる舎〉という富士吉田市の教育系NPOが、イベント会場として施設を利用してくれたんです。

どんな感じのイベントだったんですか?

イベント名は〈リセット〉。イベントといってもアットホームな交流会といった感じでした。コロナで仕事も休職、学校も休校。みんなが行動できずに色々な不安が膨らんでいく。すごくピンチな状況。でも、こういう予想だにしない事態って生きているとけっこうある。そんなピンチからみんなはどうやって立ち上がってきたのか、そんなリセットボタンを学びあおうというような企画でした。

で、かえる舎のメンバーが富士吉田市地域おこし協力隊のOB・OGだったんです。同世代にこんなユニークな地域活動をしている人がいることに興味を持ちました。その時ちょうど、地域おこし協力隊の募集が1名あったので応募して今に至ります。本当に人のご縁で今の場所にいるんですよ。

自身の構想やそのきっかけを熱く語ってくれる上田潤さん
地域おこし協力隊ではどんなことをされているんですか?

大きく分けて2つあります。ひとつは行政とも連携しながら高齢者の生活支援を有償ボランティアとして行う活動、〈じばサポ〉。例えば、おばあちゃんと一緒に買物や病院へ行ったり、雪かきや草取りという感じですね。生活のちょっとした困りごとを僕のできる範囲でお手伝いするという活動です。もうひとつは、お年寄りとの日常を切り取ったインスタマガジン〈しわじわ〉を運営しています。福祉の世界は、そのデリケートな性質から、専門職以外が参加する入り口が少ないように思います。福祉参加のハードルを下げるには、まずお年寄りについて知ってもらって、身近に感じてもらうことが必要だと考えています。

僕はおじいちゃんやおばあちゃんと一緒にいることが多いのですが、いろんな魅力を感じています。シブくて格好いいおじいちゃんとか、おばあちゃんの面倒見の良さとか。世代が大きく違うので、価値観の違いとかも喋っていて面白いし、やっぱり人生の大先輩として尊敬するところが多々ありますね。そういう、一緒に過ごしていて”いいな”って思ったところを特に若者におすそわけしたいと思っています。

若者って社会構造的にお年寄りと接する場面が少ないと思うんです。学生でも社会人でも、やっぱり接するのは現役世代までで、お年寄りに接する場面といえば自分の祖父母くらいだと思います。でも、もし接する機会があれば、先程話したリセットボタンのようなものを受け取る機会にもなるんじゃないかなと。よく悩む若者こそ、大先輩の懐の広さや知恵を借りて、よりよく前に進めたら素敵だと考えています。

▼空き家を活用したプラットフォームが生まれた経緯

こんな光景が日常茶飯事になるような地域にしていきたいというのが上田さんの想い
今回、共生をテーマにしたコミニティ拠点として空き家を活用されたんだとか?

そうなんです。といっても、地域おこし協力隊に入ってからすぐにこの構想に行き着いたわけではなくて。活動テーマは地域福祉だったんですが、実際に街に出てフィールドワークや活動を進めていく中で、”これだ”というものに出会った感じです。

印象深いのが、2021年の年明けに市内の介護予防施設を訪問したときですね。利用者さん30人くらいに、どんな生活をしているのかインタビューしたんです。みなさんが揃ってこの先の心配や不安を口にしていて、僕はすごく寂しい気持ちになりました。ずっと頑張って生きてきた人たちが、仕事から開放されてから死にゆくまでの十数年を、なんでそんな気持ちで過ごさなきゃいけないんだろう。これは社会のどこかがおかしいんじゃないかな?という違和感を覚えました。

フィールドワークで感じた違和感がだんだん形になっていったんですね。

僕らもいずれは高齢者になるじゃないですか。そうなった時、寂しさや不安感を抱えながらの生活なんてみんな嫌ですよね。でも今目の前にそんな高齢者がたくさんいる。このまま社会が変わらなかったら自分もそうなるということです。そんなの僕は絶対イヤなので、自分ごとに捉えて社会を変えたいなと思っています。

その第一歩として、〈じばサポ〉という高齢者の生活支援活動を始めました。例えば、買ったジャムの瓶の蓋フタが開けられないとか。笑い事じゃなくて、高齢者にとってはごみ捨てだって時には命がけなんです。転んで骨折して入院したらそのまま施設入所というケースもざらで、住み慣れた家には戻ってこれないかもしれない。でも、ごみ捨てやジャムの蓋をあけることって、福祉の専門的な知識や介護のスキルがない僕でもできるよなぁと。ただ半年やってみて振り返ると、利用者さんの生活が僕に依存状態になっているとも言えるんです。

高齢者は今後も爆発的に増えていくことになるから、じばサポだけだとフォローしきれない。支援という形では社会構造を変えることは難しい。ことわざでいうところの、「魚を与えるのではなく釣り方を教えよ」みたいなアプローチにしないと根本的な解決にならないという気付きがありました。とはいえ、すぐに困らなくなるのは無理なので、困っても大丈夫な依存先がたくさんあるような場所が必要なんじゃないかと。昔の村社会みたいなイメージですかね。

コミュニティ拠点である一軒家のベランダから望む美しい富士山
なるほど、昔の社会からヒントを得ているわけですね。

日本人というのもあるかもしれませんが、現代ってみんな人に頼るのがどんどん下手になってきていると思うんですよね。昔は多分一緒に頑張って支え合わないと生きていけないから、部落とかそういう繋がりが強固だったはずで、その中で人に頼り、頼られていたはずなんですよね。それが今になって、生活の困りごとはたくさんあるのにコミュニティのサイズだけが小さくなり、個人や家族それぞれの力で生きていくのが当然みたいな風潮になってしまっている。

例えば、子育てに仕事に忙しいシングルママがいる。その隣に、旦那さんに先立たれて孤独を感じてるおばあちゃんが住んでいるとします。ママがおばあちゃんを頼って、お子さんを預けたりできる関係になったらいろいろいいことがあると思うんです。ママは仕事により注力できるし、おばあちゃんは子供を世話する役割ができて、孤独感も緩和されそう。ママとおばあちゃんの信頼関係が強くなれば、すごい生活の安心感につながると思うんですよ。こういうように、いろんな暮らしを混ぜ合わせることで生まれる素敵な作用を、共生のポテンシャルと呼んでいます。

僕はこの”共生のポテンシャル”をどんどん発掘していきたい。その発掘拠点を創るというのが目下のプロジェクトです。それぞれが自分たちのペースで共に過ごせるようなスペースにしていきたいと思っています。本当にありがたいご縁で、素敵な物件に出会うことができました。この一軒家から、人と人との関わり合いで社会課題を解決していく活動をしていけたらと思っています。貧困とか障がいとか認知症とか、そういう福祉と呼ばれる領域の社会課題が共生のポテンシャルで解決できるんじゃないかな、それを探求していきたいですね。

▼富士吉田がもし、まるごとサテライトオフィスになったら…こんなことが起こる!と期待していること

コミニティ拠点新プラットフォームとなる事業所の落ち着いた佇まい

単純に面白くなるんじゃないでしょうか。いろんな人が出入りすることは、街にとってとてもいいことだと思いますし、この拠点を使ってワーケーションをしてもらっても嬉しいです。そこで一緒にソーシャルビジネスなんかを創れたら最高ですね。

テレワークが増えて、パソコンさえあればどこでも仕事ができる人は今後益々増えるでしょう。相対的にテレワーカーたちを受け入れる場所は必要になってくると思います。そこに早めに対応できる自治体や街が今後どんどんおもしろくなってくると思いますね。そのうち企業の誘致みたいな感じで、スキルのある個人の誘致とかが出てくれば、ローカルはもっとワクワクできると思います。

上田潤さんからのメッセージ

共生のポテンシャルに興味のある人はぜひ一度遊びに来てください。コミュニティが大きくなるほど人の力が集まります。テレワークでも、ちょっとお茶を飲みに来るでも大丈夫。第二の実家みたいに、あなたの帰りを待っていますー!

上田さんへのコンタクトはコチラ(Twitter) 


◯「富士吉田まるごとサテライトオフィス」構想とは

「富士吉田市内をまるごと使ってテレワークできる環境を整えよう」という構想です。

日本は新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの企業やオフィスワーカーに「在宅勤務」が推奨されて来ました。しかし、自宅で働くことに息苦しさ・やりづらさを抱えている人たちの存在は今や社会的な問題です。

そこで当社は山梨県の富士吉田をモデルタウンに「日常型ワーケーション」を提案しています。日常型ワーケーションとは、日中は通常勤務のようにしっかり仕事をして、仕事の前後の時間(朝・夕方〜夜)に地域の魅力に触れられるスタイルです。

このスタイルは、作業環境の変化による生産性の向上のほか、地域の魅力に触れる機会の創出や、常に変化を感じる生活のなかで発想力・企画力などのクリエイティビティが培われるというメリットがあります。

富士吉田は新宿から1時間強と好立地ながら、富士山が目の前に広がる絶景地。当社は富士吉田でワーケーションができる仕組みづくりに取り組んでいます。まるごとサテライトオフィスの富士吉田をぜひ体験してください!

◯富士吉田まるごとサテライトオフィスで取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」

「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークBARにいらしてください!


記事執筆/宮下 高明