全国と山梨の多拠点生活!グランピング施設運営のエキスパート『田口昌宏さん』

今回のインタビューに答えてくださった株式会社にしがきの田口昌宏さん

コロナ禍で観光業が厳しい状況にあっても、好調に業績を伸ばすキャンプ場などのアウトドア業界。その中でも今人気なのが、テントの設営が不要でお風呂やトイレを完備した、初心者でもホテルに宿泊する感覚でアウトドアを楽しめるグランピング施設です。富士北麓地域でもその数が増えており、今や都内をはじめ県内外からの観光客で賑わっています。今回は、全国で約50施設にのぼるグランピングリゾートの運営や立ち上げ、コンサルティングに携わる株式会社にしがきの田口昌宏さんにインタビュー。これまでのご経歴やこれから取り組まれるお仕事などについて聞きました!

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▼田口昌宏さんと富士吉田が結ばれるまで

ラグジュアリーなアウトドア体験ができると話題のグランピングリゾートのイメージ
本日はよろしくお願いします!

こちらこそよろしくおねがいします。

さっそくですが田口さんが富士吉田市に来られた経緯を教えてください

僕が今住んでいるのは河口湖なんですが、こちらに来た経緯は前職の仕事ですね。大学4年の時に南米でツアーガイドをやっていて、大学卒業のタイミングで日本に帰ってきました。一般的な大学生が就活している期間に、僕はずっと南米にいたので就職活動みたいなことは一切やっていなかったんです。それでもご縁があって入社できたのが宿泊系の会社で、山梨県に新しくゲストハウスとグランピング施設を作る事業を展開していたんです。支配人のポジションを募集していたので応募したところ、採用されて山梨県に来ることになりました。

僕は旅がすごく好きで、海外でバックパッカーを何度も経験しています。その時に宿泊したゲストハウスのような施設をゆくゆくは自分で経営できたらいいな、という想いがありました。なので、支配人のポジションに惹かれ、応募をして、ご縁をいただいたというのが山梨に来たきっかけになります。入ってしばらくは順調で、支配人として施設の立ち上げから始まり、採用、施設に関わる全てを一通りできるようになりました。ところが2019年からコロナになってしまって。観光業自体が苦しい中で仕事でも色々思うところがあって、2021年の9月に転職したんです。

コロナ禍の中での転職活動だったんですね

今の会社に入社したのは知り合いの紹介です。僕が転職した時期はちょうどグランピング施設の需要が高まっているのに、運営側としてグランピング施設に携わった人が多くないというタイミングで。僕の前職での経歴に注目してくださった方からお声がかかり、今に至るというわけです。実は僕が前いた会社と現職の会社が同業他社で、会社同士がお仕事でも関係があるところです。なので、転職の際は少し迷ったというのが本音ですが、前職の経験を活かして、今の仕事をしっかりこなせていると思います。

今はどんなお仕事をされているんですか?

特に注力しているのが新しいグランピング施設の開業になります。施設を一から作っていって、運営する手前までお手伝いするというものです。土地利用の法律関係の確認、施設のレイアウトの考案、この施設を開業したらどの程度儲けが見込めるのかという収益シミュレーションまで行います。また、行政の手続きや施設が用意すべきコンテンツの提案などもやっています。すごくストレートな言い方をすると、開業までにかかわることを一通りやっているというのが正しいかもしれません。

会社からは法的な知識を要する土地探しやグランピング施設運営による利益の計算方法といった仕事のベースを教えてもらいました。特に都市計画法や自然公園法を知らないことには仕事にならないので。ただ、ベースこそ教われど、その後は現場で実際にお客さんとお話ししながら解決策を一緒に模索していくということがほとんどです。一口にグランピング施設と言ってもさまざまなスタイルがありますし、たとえ似たような施設だとしても立地によって取るべき手段等が変わってくるからです。その辺りの柔軟な対応は、バックパッカー時代に大分培うことができたと自負しています。

▼バックパッカーとして旅を楽しむ

ボリビアのラグナコロラダでの一枚、ボリビアでは現地ガイドとして働いていた
今の仕事に通じるかもしれませんが、もともと旅がお好きだったのですか?

旅を好きになり始めたのが小学生の頃です。父親が海外旅行好きで、時々一緒に連れて行ってもらったのが旅を好きになったきっかけです。そこから英語に興味を持ち、ペンパルフレンドとやりとりもしていました。その子はフランス人の子で、小学校高学年の時にはうちにも泊まりに来てくれるくらい交流がありました。中三の頃には反対に僕の方がホームステイを経験しにフランスに行ったりもしています。その頃には、めちゃくちゃ海外に興味を持っていました。

その影響もあって高校では国際系のことが学べる学校の外国語科に通うことにしました。そこでは一年生から第二外国語が勉強できるというところだったので、フランス人の子とより楽しく文通するために、フランス語をとったんですよ。留学制度もあったので、旅好き・外国語好きな僕にとっては一番いい選択肢だったと思います。

そこで留学生として海外経験もされたんですね。

いえ、実は一年生からサッカー部のレギュラーになってしまって、顧問に部活をやめるか留学を諦めるかの二択を迫られました。結局、サッカーも好きだったので、高校ではそちらに注力して。「大学に行ったら絶対海外旅行を楽しんでやるんだ」という気概で高校生活を送っていました。大学一年生になって、大学の友達と二人で東南アジアに行ったときは最高に楽しかったです。そこからインドへ一人旅をしたりとかもしましたね。

大学二年が終わった頃には1年の休学をして、ワーホリでオーストラリアへ8カ月滞在しました。ワーホリ自体がしたかったわけじゃなくて、どうしてもいきたかった南米への旅の資金を稼ぐというのが目的でした。南米は移動だけでも2,3日必要だったりして、歳をとってからは絶対に行きにくいと思っていたので、この時しかないという気持ちでしたね。

その時の旅があまりにも楽しすぎて、復学した後も気持ちが冷め止まず。南米に支社を持つ日系の会社を調べまくって「働かせてください」というメールを送りまくりました。そこでパナマに本社を持つ日系の会社が「来ていいよ」と言ってくれたのが大学四年の時ですね。その会社は中南米専門の旅行を扱う旅行代理店で、いろいろな地域を案内するプライベートツアーを企画するというところでした。そのプライベートツアーの案内として僕が配属されていたのが『天空の鏡張り』で有名なボリビアのウユニ塩湖です。

海外経験の中では地元の小学校のボランティアとして活動したことも
ここまでのお話でどんなご経験が印象深いですか?

いろいろな経験をしましたが、結局チリが良かったと思います。と言ってもスタートは最悪で、置引にあって着いて一週間でパスポートを含む荷物が全部なくなってしまいました。アルゼンチンへ行くバスに乗るところで、どうせ長時間の移動で寝るんだからとコンタクトまで外してしまっていたので周りもしっかり見ることすらできない状況で。だから盗られた日は一日大泣きしましたね。警察署に行って事情を説明したら、日本大使館に行きなさいとタクシーに乗せてくれたんですが、着いた日本大使館はクリスマスのお休み。

前日友達になった人の家をギリギリ覚えていたので、その子の家にお邪魔して、タクシー代を払ってもらいました。親にお金を送って欲しいと電話をしたんですが「普段連絡してこないくせに、なんでそういう時しか電話してこないんだ」みたいにずーっと怒られました。でも、全部取られて電話も借りていたお金だったので、長くなると思って途中でその電話を切りましたね。そんな出来事が序盤にあったんですが、そのおかげで現地の人たちに泊めさせてもらったり、助けてもらったので、結果的に思う存分旅を楽しみました。週末は必ず家族と過ごすとか、近所の人と集まって5時くらいから夕食バーベキューみたいなのをやって過ごすとか、そういう南米の生活感を体験できたのですが、ああいう文化はすごくいいですよね。

それに割と南米に行く前のワーホリが良かったかもしれません。いろんな海外の人と一つ屋根の下でシェアハウスをして、これまで日本で触れることができなかった価値観にも出会えるんですよね。たとえば僕が出会ったドイツ人の子は、自分のやりたいことがまだ決まってないから、一度ワーホリに挑戦してみようという感じでした。日本だとどうしても高校のうちに次の進路を決めておかなければいけないという風潮が強くて、一度視野を広げてみるという手段そのものが選択肢から抜けているように感じます。

▼富士吉田がもし、まるごとサテライトオフィスになったら…こんなことが起こる!と期待していること

ドットワーク富士吉田店のミーティングブースでインタビューに答えてくれる田口さん
富士吉田がまるごとサテライトオフィスになったらどんなことが起こると思いますか?

僕自身も全国と山梨の多拠点生活で、周りにもそういう人がいますが、インターネットによって働ける場所を自由に選択できる人たちが、たくさん入ってくることで、古いルールのようなものが変わっていくように思います。良い悪いは置いておくとしても、やっぱりこの地域にはこの地域が培ってきた風土があって、それが新しい風を取り込みにくくしている部分もあるんですよね。そういう垣根を崩していって、富士吉田市で開催されるハタフェスのような、これまで地域にはなかったけど、新しい人たちと地元の人たちとのコラボレーションによる取り組みが生まれたり、さまざまな分野の人が出会う機会が増えたりと、これからもっと面白いこと増えていくのだと思います。

その中には、この地域で今増えている空き家の利活用のヒントもきっとあって、そこが解決することで、地域に新たな人が加わりやすくなるという好循環も期待できるんじゃないかと思っています。

田口昌宏さんからのメッセージ

これは僕自身がペットを飼っているから解決したい問題なんですが、ペットと一緒に遊べるところがあまり多くないように思います。特に宿泊施設はペットと一緒に泊まれるところが少なくて。今後はペットと一緒に旅行ができる環境を作って行きたいです。

また今年中にペットと一緒に泊まれる施設を北麓地域で開業予定なので、もし興味を持ってくださったら、ぜひ泊まりに来てください。

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◯「富士吉田まるごとサテライトオフィス」構想とは

「富士吉田市内をまるごと使ってテレワークできる環境を整えよう」という構想です。

日本は新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの企業やオフィスワーカーに「在宅勤務」が推奨されて来ました。しかし、自宅で働くことに息苦しさ・やりづらさを抱えている人たちの存在は今や社会的な問題です。

そこで当社は山梨県の富士吉田をモデルタウンに「日常型ワーケーション」を提案しています。日常型ワーケーションとは、日中は通常勤務のようにしっかり仕事をして、仕事の前後の時間(朝・夕方〜夜)に地域の魅力に触れられるスタイルです。

このスタイルは、作業環境の変化による生産性の向上のほか、地域の魅力に触れる機会の創出や、常に変化を感じる生活のなかで発想力・企画力などのクリエイティビティが培われるというメリットがあります。

富士吉田は新宿から1時間強と好立地ながら、富士山が目の前に広がる絶景地。当社は富士吉田でワーケーションができる仕組みづくりに取り組んでいます。まるごとサテライトオフィスの富士吉田をぜひ体験してください!

◯富士吉田まるごとサテライトオフィスで取材に応じてくださる方を募集しております。

「地域活性や街づくりに興味がある!」

「今こんな活動をして街を盛り上げている」

「頑張っている人がいるので記事で紹介してほしい」

「面白い構想があるのでこんな方と繋がりたい」などなど。

ひとつでも当てはまったら是非ドットワークBARにいらしてください!


記事執筆/宮下 高明